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ー波乱ー156

それから僕たちは院長と犯人の指示に従って動いていたんですけどね。そう、犯人から要求されていた金額というのは二億円でした。しかし、それを分割して運ぶということを僕たちはしていたんです。一回目の要求金額は五千万円。受け取る場所は夏見駅のコインロッカー。次の場所は秋山駅のトイレの個室でした。それで、この秋山駅に向かうときにはもう時間が迫っていたので、バイクを使ったんですけどね。ですが、そこで受け渡し時間に遅れてしまい、犯人が望を監禁している場所を爆発させてしまったわけなんです。とりあえず、僕の話はここまでですかね? あと気になったことといえば、僕たちの部屋の前にある防犯カメラの位置がずれていたということでしょうか。いつもは廊下側を向いているカメラだったのですが、数日前からはその反対側を向いて非常口側を向いていたということが気になった点ですかね?」  白井の方は、その和也の話の重要な部分だけをメモしているらしく、そこにいた警察官に指示を出しているようだ。 「そうだったんですか……では、ご協力ありがとうございました。そのカメラのテープか何かってありますか?」 「それは地下にあるモニター室の方にあると思いますよ」  裕二は白井にそう答える。 「まぁ、さすがに犯人も自分が写ってしまうようなミスはしないとは思いますけどね……ですが、念のためお願いいたします」 「構いません……」  そう言って、裕二は白井を連れて地下にあるモニター室の方に行ってしまったようだ。  和也はひと息吐くと、望のそばへと近寄る。 「しかし、良かったなぁ。助かって……」 「まぁ、雄介からもらったドッグタグのおかげなんだろうけどな」  そう嬉しそうに言う望。 「まぁ、確かに……しかし、よくあの瓦礫の中で助かったよな?」 「ん? 確かに左腕は挟まってしまったけど、うまい具合に体の方には瓦礫は乗ってなかったからな……コンクリートとコンクリートの間に入れたから助かったんじゃねぇのか? さすがに一瞬は意識を失っていたのかもしれねぇけど、気付いた時にはその隙間からオレンジ色の服が見えてたからな……それが雄介だったってわけだ。でも、まだ声をうまく出すことができなくて……何か雄介に知らせることはできねぇのかな? って思った時に出てきたのはこのドッグタグだったっていうわけさ。それで、この光を太陽の光で反射させたってわけだ。そしたら、雄介が俺のところに来てくれたんだよな……」

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