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ー波乱ー157

「そうだったんだ。ある意味、雄介からのいいプレゼントだったんだな。そのドッグタグ」 「ああ、確かにこれがなかったら助けを求める方法がなかったかもしれなかったしな。もし震災とかで瓦礫の下に埋もれてしまった時に、笛を鳴らして自分がいる場所を知らせるというのを思い出したからさ。それで、そのドッグタグを使って光を反射させてみたってことだ」  望はひと息吐くと思い出したかのように、 「お前……まさか、昨日から一睡もしてないんじゃねぇのか?」 「ん? それはいつものことだから、慣れてるから平気なんだけどさ……まぁ、二時になれば雄介がフライングするような勢いで吹っ飛んでくるだろ? それまでは俺がここに居るからな。そこからは俺は寝ることにするよ。それに、さすがに今日からは警察が望の病室前にでも待機してくれるだろうし、だから、もう望的にも安心だろ?」 「ま、そこは親父が警察に頼んでくれるだろうしな」 「確かに頼んでくれるとは思うけどさ、まだ外に警察官がいる気配はねぇけどな。ま、いっか……。んで、望は俺の体の方、心配してくれるわけ?」  そうふざけて言う和也だったのだが、望はその和也の言葉に顔を赤くして、 「ば、馬鹿っ! それはないに決まってるだろ!」  そう言うと、望は布団の中へと潜って行ってしまう。  和也はそんな望に微笑むと、椅子の方へと腰を下ろすのだ。  望の性格というのは本当に分かりやすい。心配してないと口では言うのだが、行動に出てしまっているのだから。 「ま、いっか……」  そう和也は独り言を漏らすと、雄介が来るまでの時間、窓の外を眺める。  昨日とは違い、雲一つない青空が広がっていた。 「和也……」  と布団の中から籠ったような望の声が聴こえてくる。 「ん?」 「……ト、トイレ……」  布団の中からだったのか、望の声は和也には届いてなかったのであろうか? 和也は、 「はぁ!? 今、なんて言ってたんだ?」  と聞き返す。 「だから、トイレだっつーの!」  望は布団から這い出てきて、和也に向かい叫ぶようにして言うのだ。  その時、目が合ってしまった二人。なぜだか一瞬固まったようにも思えたのだが、和也の方は慌てたように、 「トイレな、トイレ……」  そう和也はニヤけたように言うと、 「ああ、トイレだ……トイレ……」  と言いながらも、望も和也から視線を外して顔を赤くさせていた。 「でも、行けないことはねぇだろ?」 「まだ、頭の方はクラクラするんだよ……だから、車椅子の方持って来てくれねぇかな?」 「なら、最初から車椅子だって言ってくれれば良かったじゃん!」 「うるさい! いいから、早く車椅子の方を持って来てくれよっ!」

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