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ー波乱ー160

「朝から、そんなことやってしまってたんか?」 「まずはそこなんだよなぁ。そこで、携帯を水没させてなかったら!?って思うと……」  和也はまだその部分を悔やんでいるようだ。 「まぁ、そこはもう気にせんでええんとちゃうの? とりあえず、望は生きておったんやしな」 「そうだけど! もし、あの爆発事故で望が死んでしまっていたら!? って思うとさ……」 「でも今は生きておるんやから、ええんやないの? 俺とお前で連携プレイが出来たんやし」  そう言って、雄介は和也に笑顔を向ける。 「あ、ああ……うん! そうなんだよな……ありがとう、雄介。みんながそう言ってくれるお陰で、なんだか気分が楽になってきた気がしてきたからな。やっぱり、友達っていうのはいいもんなんだな」  和也は今回の件でみんなにフォローしてもらえ、元気も感動ももらったのだろう。  普段、あまり泣くことのない和也だが、望や雄介から視線を外し、顔を俯ける。  昔、和也は雄介のことがあまり好きじゃなかった。本当に好きだった望を恋人として取られてしまったからだ。しかし今は、あの時望と付き合っていなくて良かったとさえ思っているのだろう。それだけ雄介がフォローしてくれているのだから。  望は雄介といるとき、相変わらず素直ではないが幸せそうな表情をしている。そして今の望と和也は友達という関係を保っているので、それでいいのだろう。無理に他人の心を奪ったとしても、それは嘘偽りだらけの恋人関係にしかならない。 「まぁ、いいか……」  そう納得した和也は、望たちに視線を向け、いつもと変わらない笑顔を見せる。 「今さぁ、雄介と話してたんだけど……お前、携帯大丈夫なのか?」  そう言われて和也は急に大声を上げる。 「あー! 忘れてたー!」 「それって、すごい忘れ方だよな?」  笑いながら言う望に対し、和也は目を丸くしていた。 「へ?なんでだよ……」 「だってさぁ、お前、昨日から携帯のこと話してんのに、忘れてるって……相当なもんだろ?」 「まぁ、しょうがないだろ?昨日から携帯開く暇なんてなかったし、忘れてたんだからな。それにしても、望の携帯はいいよなぁ。防水用携帯なんだろ?あの雨の中でも壊れてなかったんだからさぁ」 「あー!ところで、俺の携帯は!?」 「院長んとこ……」 「はぁ!?ちょ、それはさすがにまずいって!親父になんかに携帯の中見られたらー!」  急に慌てたように言う望。

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