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ー波乱ー161

「望……俺は望の携帯の中身、見ちまったんだけど、いいのか?」  そう和也が言った直後、望は和也のことを一瞬睨み上げる。  その望の反応に一瞬体を固まらせる和也。だけど、次の瞬間には、 「だってさぁ、そこは仕方ないじゃんか。中身の方を見ないと誰のなんだか分からなかったわけだしさ」  和也は望を宥めるかのように言うと、 「とりあえず、親父のとこに行って、和也……俺の携帯取ってきてくれねぇかな?」 「まぁ、それくらいなら構わないんだけどな」  和也はそう言うと席を立って病室を出て行く。  それと同時に、望はため息を漏らすのだ。 「なぁ、雄介……昨日の話はもういいよな?」  そう望は雄介を真っ直ぐな瞳で見つめると、雄介は望が何を言いたいのかが分かったのであろう。頭を頷かせ、望のことを抱き締める。 「ホンマ……無事で良かったわぁ」 「お前がくれたドッグタグのおかげだからさ。もし、これがなかったら、俺は今頃あの瓦礫の中に埋もれていて、助けさえも呼べなかったかもしれないんだしな」 「でも、今回はたまたまやで……俺がそれを買ったのもな。望が生きてるっていう証拠を残したっていうのもな……偶然っていうんか? 奇跡とでもいうんかな?」 「まぁな……その偶然というものが、今回は助かったんだろ?」 「せやな……ホンマ、助かったみたいで良かったわぁ」  雄介はそう言うと、更に腕の力を込めて望の存在を確かめるかのように触り、まずは額にキスを落とすと、頰や唇にもキスをする。 「ん……」  そう望は甘い吐息を漏らし、色っぽい顔で雄介を見上げる。  思わず望と目が合ってしまった雄介は、その色っぽさに負けてしまったようで、 「望……ホンマ、この場でええんか?」  その雄介の言葉に、頷く望。  望から雄介を誘うなんてことは滅多にあることではない。  そして、雄介が誘ってきているような唇にもう一度キスをしようとしたとき、望の病室のドアが開いて、 「望ー! 院長から携帯預かってきたぜー」  と和也が笑顔で入ってくる。  それに気付いた雄介と望はドアの方へと視線を向け、望は和也を睨み上げるのだ。 「もしかして……お邪魔様でした?」 「思いっきり邪魔なんだよ……しかも、俺の方はわざと和也に親父の所に行かせたのにさ……その意味分からなかったのか!?」  その望の言葉に、和也と雄介は目を丸くするのだ。

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