963 / 1065

ー波乱ー162

 それから、和也と雄介はクスクスと笑い始める。 「な、なんだよー」 「望ってこんなに可愛かったんかな?って思うてな」 「そうそう! 特に俺のことまで追い出してまでなんてさ。そんなに望は雄介と一緒にいたかったんだなって思ってな。そりゃ、俺は邪魔なわけだ……それに、携帯変えに行かないとだしな」  和也は望に携帯をベッドの上へと投げ渡すと、望の病室を出て行くのだ。 「望……どうしたん? 和也のこと追い出すようなことして……昨日、打ち所でも悪かったんか?」 「打ち所なんか悪くねぇよ」  そう言うと、望は恥ずかしくていたたまれなくなったのか、布団の中へと潜ってしまう。  いつもと変わらない様子の望にホッとする雄介。  望というのは、あまり言いすぎると口を開いてくれなくなってしまうからだ。  せっかく二人きりにしたのに、雄介が望のことを構ってくれないことに気付いたのか、望は布団の中から顔を出す。  すると、雄介の横顔が見えて、なんだかそれだけでも男らしさを醸し出している雄介。  しかし、雄介ってこんなにもかっこよかったのであろうか? という表情で雄介のことを見惚れていると、それに雄介は気付いたのか、 「どうしたん?」  そう笑顔で言ってくる雄介の顔が望の目に飛び込んで来たようだ。 「何か飲みたいもんでもあるか? トイレ近くなってまうけど……ご飯、あまり食えへんのやったら、水分の方はとっておいた方がええしな」 「あ、おう……知ってる……なら、ポカリにしようかな?」  そんな風に普通に言う雄介なのだが、どうやら望にはどんな雄介でもかっこ良く見えてしまっているらしく、望は顔を赤くしながら視線を逸らしてしまっている。 「ほな、行ってくるな」 「あ、ああ……おう……ありがとう……」  雄介はそう言うと、笑顔で望の病室を出て行く。  望がいる病室というのは三階の奥の病室で、あんな事件に巻き込まれているのだから当然、病室のドアには「面会謝絶」の看板が掲げられていた。  雄介が地下にある売店に向かっている途中で、望の病室に一人の男性が入ってくる。  その男には「面会謝絶」の言葉が見えてなかったのであろうか? ゆっくりと望の病室のドアが開かれる。望はそのドアの気配に気付いたのか、警戒しながらドアの方に視線を向けるのだ。

ともだちにシェアしよう!