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ー波乱ー163
雄介がこんなにも早く戻って来たのだろうか? いや、雄介だったら逆にドアをこんなにゆっくりと開けるだろうか?
そんなゆっくりと開かれるドアを、望は視線を外さずに完全に開くまで待っていた。
「吉良先生……大丈夫ですか?」
そう聞きながら立っていたのは、ここの病院で働いている整形外科医の青嶋皇志(あおしま こうし)だった。
「院長に頼まれて吉良先生の様子を見に来たんですよ」
皇志という人物は、望がここで働き始めて一年後に来た人物だ。もちろん、医者としての頭の良さは申し分なく、スポーツの方も昔柔道や空手をやっていたことから体はがっしりとした体型だ。顔立ちもモテそうな顔をしており、バレンタインになると女性患者さんからチョコをたくさんもらうほどだ。
「え? だって、先生は俺の担当じゃないでしょう? それに、コンビでいるはずの看護師さんは?」
望はどれだけ警戒しているのだろうか。それとも、この皇志が犯人とでも思っているのだろうか。望は突っ込んだ質問を繰り返している。
「とりあえず、担当ではないのですが、院長に頼まれましたので来たんですけどね」 「それはどこで?」
「それは……」
そう皇志は望の質問に間を空け、視線を天井に向けて何か考えているように見える。
「何をそんなに考えることがあるんです? 院長に頼まれたのなら、頭のいいあなたなら、いつ、どこで、どんな場所でっていうのを記憶しているはずですから、簡単に答えられると思いますけどね。今さっきのことならなおさらです。あなたがすぐに答えられなかった理由は何ですか?」
望がそこまで言うと、皇志の表情が変わり、いきなり望に襲いかかる。
皇志は望の首を両手で締め始め、望は片手だけで必死に抵抗するが、それだけでは全く歯が立たない。その間にも、望の首は皇志の手によってどんどん締めつけられていく。望は声を上げようとするが、気管が圧迫され、もう声は出ない。
「本当に……お前さぁ、あの爆発事故で、なんで生きてられたんだよ。生きてなければ、院長に可愛がられている俺が次期院長になれたのにさ。お前がいると出世に響く感じがするんだよね。まさか、俺自らお前に手を掛けることになるなんてさ、思ってもみなかったけど……」
皇志がそこまで言ったところで、いきなり望の病室のドアが開かれる。
「望!」
それを見た雄介は病室に飛び込んできた。
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