968 / 1062

ー波乱ー167

「あ、君は確か……梅沢君の恋人の……んー、役者は揃ったって訳だ」  その裕二の独り言のような言葉に、三人は目を丸くする。 「とりあえず、本宮君、梅沢君と新城君をここに呼んできてくれないかな?」 「あ! でも、和也は帰ったかと……」  と望は慌てて言ったのだが、 「和也なら、僕が終わるまで仮眠を取るって言ってましたから、多分、部屋の方にいるかと思いますよ」 「じゃあ、悪いけど……二人の愛の深さが分かったところで、もう一つの問題の種明かしでもしましょうか?」  裕二が言っていることがまだ分かっていない三人は、頭にきっとはてなマークを浮かべているのであろう。  裕実はとりあえず病室を出ると、和也と颯斗のことを呼びに向かう。  その間に裕二は簡易ベッドを望の病室へと運んでくる。そこに雄介を寝かせ、簡単に治療を済ませると、ちょうど颯斗も和也も望の病室へとやって来る。そして颯斗を裕二の隣に立たせ、 「さて、今回……新城君ですが……梅沢君のことを好きだと言ってましたよね?」  その裕二の問いに、望たちは頷く。 「ただ単に、私が君たちの愛を知るために送り込んだだけだと言ったら?」  その問いに、いや答えに、それぞれ表情を変えて驚きの声を上げる。  その反応に一番笑っているのは裕二と颯斗だ。 「ちょっと待てよ……ってことはさ……新城先生は全く和也には興味がなかったっていうことなのか?」 「まぁ、そういうことになりますよねぇ。とりあえず、新城君が関わっていたことは全部私が君たちに仕掛けていたことってことなんだけど、楽しんでいただけたかな? まぁ、正確には私の方が楽しませていただいたっていうことになるのかな? でも、いいものを見せてもらったようにも思えるよ。だって、君たちの愛情や友情には色々と感動させられた部分が沢山あったからね……どんな状況においても仲間や恋人に相談して助け合う。素晴らしい仲間なんじゃないかな? これからもその心を忘れずにいてもらいたいってところかな?」  最初は裕二にハメられたことに腹を立てていた四人だったが、裕二が何のためにそんなことをしたのか、その理由が分かると納得したようだ。しかし、疑問に思うことはいくつかある。 「なぁ、親父……新城先生が関わっていないことに関しては親父が仕掛けたことじゃないんだよな? じゃあ、和也に告白してきた女性、裕実に手を出してきた男性、雄介に告白してきた女性っていうのは親父が仕掛けてきたことではないってことなんだよな?」

ともだちにシェアしよう!