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ー波乱ー170
「せやな……」
雄介はその望の言葉に微笑むと、望の唇に唇を重ねる。
それから一ヶ月後。
望の方は、大変だったリハビリも雄介のおかげで何とか頑張り、今ではだいぶ普通に腕を動かせるようになっていた。まだ細かい作業はできないようだが、ごく一般的なことまではできるようになったようだ。
「望ー、今日は退院やんな……」
「まぁな……」
病室で楽しそうに話す雄介と望。
雄介は昨日、二十四時間の勤務を終えて、今日はたまたまオフの日だったらしく、望の病室へと来ていた。
雄介は椅子に座って窓の外を眺める望の背中を見つめる。
望が見ている方向には、すでに桜が咲いていて、薄いピンク色の花弁が開いていた。
風が吹くたびに舞い散る花弁は、ピンク色の雪を散らしているようだ。
大地の方は、そのピンク色の絨毯を作っているのだから。
「今年はお花見逃しちまったな」
「ま、来年にまた行こうや。まぁ、東北の方はこれからやと思うねんけど……」
「確かに……」
「望って、桜好きやったんか?」
「んー、まぁな……花は基本的にはあまり好きじゃねぇんだけどさ……桜は何となく好きなんだよなー」
「それなら、今からドライブ行こか?」
何故かその雄介の言葉に動揺している望。
「あ、いや……いいって……」
挙句、何故か顔を真っ赤にさせ、瞳を宙へと浮かせている。
「何で、顔赤くしてるん?」
「あ、いやぁー、気にすんなって……」
そう望が言った直後、望の病室のドアが開き、裕二が顔を出す。
その裕二の姿に驚いたのは雄介だ。そうだ、きっと雄介はまさか裕二がこの病室に来るとは思ってなかったからであろう。
雄介は動揺しながらも椅子から立ち上がる。
そんな雄介の姿に裕二はクスリとして一回咳払いをすると、
「とりあえず、君達の新しい家の方は決まったよ……荷物の方もそこにもう運んであるから……場所の方は病院の近くにある一軒家。家賃の方は私の方が払っていくから心配しなくても大丈夫だからね」
その裕二の言葉に雄介は目を丸くしながら口もパクパクとさせている。
「ちょ、ちょっと待って……へ? あ、ん? いきなり家って何!?」
完全にパニック状態の雄介。
「雄介……覚えてないのか? 前に親父が言ってただろ? 親父がこっちに住むようになるから……親父が俺達の為に家を見つけてくれるってさ」
「せやけど……急すぎるっていうんか……え? あ、まぁ……ん?」
未だにパニック状態の雄介。完全に言葉もどうしたらいいかわかっていないようだ。
「ん? そうか? 親父は俺達の事、新居に住ませる気満々だったぞ」
「あー」
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