975 / 1063

ー海上ー3

 雄介はその部屋から出ると鍵を閉め、キッチンへと向かう。  地下室は少し寒いと感じたが、一階に上がってくると部屋の中は蒸し暑く、蝉の鳴き声もうるさいくらい耳に入ってきた。 「さすが夏やねんなぁ……」  雄介はそう言いながらエアコンのスイッチを入れ、ソファへ体を預ける。  今日は望は休みではなく、雄介が休みの日で、雄介は休みの日にはこんなふうにゆっくりとした時間を過ごしている。  エアコンの風に当たりながら、雄介は窓の外を眺める。  いつもこの時間はこんなにゆっくり過ごせない雄介。  毎日毎日、仕事に行けば訓練や救助に向かう日々。だからこそ、休日はこんなふうにゆっくり過ごしたいと思うのかもしれない。  もっと贅沢を言えば、恋人である望とゆっくり過ごせればいいのだけど。  青い空に白い入道雲。  今日という日は本当に夏だと思わせてくれるような空だ。  そんなゆっくりとした空間の中で、雄介は日頃の疲れが溜まっていたのだろうか。いつのまにか瞼を閉じてしまっていたらしい。  次に雄介が目を覚ました頃には、さっきまで見えていた入道雲が雷雲に変わり、大地を雨が濡らしていた。さっきまでの青空が本当に嘘みたいに、今の空は雨雲に覆われ、雷が近づいてきている。  雄介はそれに気づき、慌てて飛び起きる。雷が嫌いなわけではないが、庭には午前中に干した洗濯物がある。  雄介は慌てて庭に出て、洗濯物を取り込む。  雄介が洗濯物を取り込んだ時には、もう全身びしょ濡れになっていた。  最近の雨は本当に異常だ。今の時代、突然の豪雨なんて当たり前になってきている。天気予報だって当てにならないくらいに、突然の雨が多くなってきた。しかも、それは雷を伴う大雨だ。下手をすると、その一瞬で道が冠水してしまうほどだ。  当然、雄介もこの雨で、まるで頭からシャワーを浴びたかのように全身ずぶ濡れになってしまっていた。 「……って、なんやねん。ホンマ、今日は散々やな……せっかく干しておいた洗濯物はびしょびしょになるし、自分もびしょびしょになるし、とりあえず洗濯物はもう一回洗わなあかんしな。俺もシャワー浴びなあかんし……。そうそう! 風邪ひいたら、完全に望に怒られそうやしな。まぁ、望からしてみたら、そこも愛情表現らしいけど……まぁ、風邪はひきたくないから、シャワー浴びてこよー」  雄介はそう独り言を言いながら、にやけた顔でびしょ濡れの洗濯物を持って脱衣所へと向かう。

ともだちにシェアしよう!