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ー海上ー7
雄介は、その寝息に安心したような表情を浮かべ、音を立てずにベッドへと近寄った。
ベッドで寝ている望は、月明かりを背にしていて顔は見えないが、この家には二人しか住んでいないため、寝ているのが望だとわかる。確認を終えると、雄介はリビングへと向かった。
雄介が寝室から出て行ってしばらくすると、望は目を覚ました。
半身を起こして周りを確認すると、部屋の中はいつの間にか闇に包まれている。
「ん? あれ? 俺、どうしたんだっけ? 仕事終わって帰ってきて……」
今までの記憶を辿りながら、望は体を起こしていく。頭も徐々に覚醒し、五感も研ぎ澄まされていった。すると、望の嗅覚を刺激するような良い匂いが漂ってきた。お腹を空かせて帰宅した望にとって、その香りは強烈で、自然とお腹が鳴る。
「そっか……そうだったんだよな……」
一人納得した望は、さっきのことを忘れるかのように階下へと降りていく。
階段を降りると、先ほどよりも一層良い匂いがしていた。リビングへと通じるドアを開けると、テーブルの上にはラップのかかった料理が並んでいる。
テーブルの上にある料理は、確かに雄介が作ったものだとわかる。しかし、キッチンやテーブルの周りには雄介の姿はない。
望が辺りを見回すと、雄介はソファに座っていた。だが、望が降りてきたにも関わらず、雄介は静かだった。
いつもなら、望の気配に気づいて笑顔で迎えてくれるはずなのに、今日はそれがない。
先ほど、望が拗ねて寝室に籠ってしまったのがいけなかったのだろうか? だから、雄介は望を無視しているのだろうか?
しかし、無視しているわけでもなく、テレビは点いているが、雄介が見ている様子もない。きっと一人で考え事でもしているのかもしれない。
望は静かに雄介の背後から近づき、顔を覗き込む。どうやら雄介は、座ったまま寝てしまっているようだった。しかも、何故かクッションを抱いて眠っている。
そんな雄介の姿に、望はホッとした。自分が拗ねたことで雄介が怒っているわけではないとわかったからかもしれない。
望は、雄介を起こさないように気を遣いながら、テーブルの上の料理をレンジに入れ、温まるのを待った。
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