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ー海上ー8
だが、温めたと同時にレンジ特有の音がリビング中に鳴り響く。その音にびっくりしたのは望だ。
いつもなら、そんな音で体をビクつかせたりはしないのだが、雄介を起こしてしまうかもしれないと思ったからかもしれない。
時すでに遅しとは、こういうことを言うのだろう。
雄介はそのレンジ特有の音で目を覚ましたらしい。
ソファから半身を起こし、「何が起きた!?」という表情をしながら辺りを見渡している。だが次の瞬間、望がいることを確認すると、笑顔を浮かべて立ち上がり、望がいるテーブルの方へとやってくる。
「飯、一緒に食うてもええか?」
雄介は、さっきのことを忘れたかのように、自然と望に話しかける。
「あ、ああ……まぁ……。でも、悪いな……お前のこと起こしちまったみたいでさ……」
「まぁ、そこは気にすんなや。寝てもうた俺も悪いんやしな」
雄介はそう言うと、キッチンへ向かい、自分の分もレンジに入れる。
「な、望は明日休みやねんやろ?」
「あ、ああ……まぁな……」
雄介は望に視線を向け、笑顔を浮かべる。
「ほなら、久しぶりにビール呑まへん?」
「へ? ビールか!? あ、ああ……まぁ……とりあえず、お腹に入れるもん入れてからな。そうじゃないと酔い回るの早くなっちまうだろうしさ。それに、体にも悪いしな」
望が言った直後、レンジから雄介が入れておいた料理が出来上がったという音が響く。
「ほなら、後でな……」
「ああ……」
「せやけど、なんか望とそないにお酒とか飲んだ記憶がないんやけど?」
「そうかもしれねぇな。まぁ、俺たちって基本仕事が忙しいんだし、ゆっくりできる時間がねぇんだから仕方ねぇよ……ってか、俺は明日休みだからいいんだけどさ……お前は大丈夫なのか?」
「俺は酒強いしな。まぁ、望と楽しくお酒飲めるんやったら、別に俺はそれで十分やしな」
雄介は笑顔で言うが、望は何も返事をせず、ただ雄介が作った料理を口に運んでいた。
「ま、お楽しみはあとでってことやんな」
「まぁ……そういうことだ……」
望はぶっきらぼうに答えると、一気にご飯を口に運び、
「ごちそうさまでした……」
と言って、食器を流し台へ運び、お皿を洗い始める。
「望……それ置いておいたらええのに……俺がやっとくし」
「お前が作ったんだから、俺が洗うに決まってるだろ? それくらいだったら、俺にもできるんだしな」
望にとって、雄介に料理を作ってもらったお礼の意味でお皿を洗っているのかもしれない。
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