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ー海上ー9

「ん……あ、ああ……ありがとうな……」  雄介もご飯を食べ終えると、食器を流し台に置き、 「ほなら、早速呑むかぁ!?」 「ああ……そうだな……」  雄介はそう言うと、冷蔵庫からさっき買ったビールを取り出し、望の前に一本のビールを置く。  そして、自分の缶ビールを手に取ってテーブルの上に置くと、プルタブを開け、笑顔で、 「乾杯!」  と、嬉しそうに叫んだ。  その雄介の姿に見惚れていたのは望だ。  いつも以上に爽やかな笑顔を見せる雄介に、久しぶりに見惚れてしまっているようだった。  雄介という人物は、「夏」という言葉が似合う男なのだろうか?  白いランニングシャツに短パン姿。ランニングシャツの隙間から見える褐色の肌と、筋肉質な二の腕。 「……望!? 呑む前からぼーっとしておったみたいやけど、どないしたん?」 「あ、ん? ごめん……ほら、昼間、今の季節暑いだろ? それで、体が怠くてさ……だから、ぼーっとしちまっただけだ」  夏だからこそ、上手くごまかせる言い訳だったのかもしれない。 「せやな……夏は昼間暑くてしゃーないもんな。ぼーっとしてまうのは分かる気ぃがするわぁ」 「……だろ?」 「ああ、まぁ……それやったら、望の方は無理せんでもええよ……まぁ、呑めるんやったら呑んでもってところやけどな」 「ああ……」  望は雄介にそう言われ、プルタブを開ける。  夏になると、ビールが美味しく感じるのは何でだろうか?  雄介と一緒にビールを呑むのはいいな、と望は思う。いや、望の場合、一人で呑むより誰かと呑んだ方がいいと思っているので、ちょうどいいのかもしれない。 「ほな、改めて乾杯!」 「乾杯」  望はそう言うと、雄介と一緒に一口目を口にする。 「あー! 久しぶりに呑むビールは美味いわぁ!」 「まぁな……」  一口飲んだだけで、望はなぜかいつも以上に笑顔になっている。  久しぶりにご機嫌そうな望を見て、雄介も安心したような表情を浮かべていた。 「雄介ー」 「ん? 何?」  いきなり名前を呼ばれた雄介は、驚いたように目を丸くして望を見つめる。 「あのさ……」  まさか望は、一口飲んだだけで出来上がってしまったのだろうか?  いや、普段あまり呑まない望なら、あり得そうだ。  もしかしたら、望はお酒を呑めるけど、すごく弱い人間なのかもしれない。 「望……ほんで?」 「ただ……お前の名前を呼びたかっただけ……」

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