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ー海上ー11
とりあえず雄介は高鳴る心臓を抑えながら顔を上げ、いつもの笑顔で望へと視線を合わせる。
だが、やはり望はまだお酒の症状が出ているようには見えない。ただ顔が赤くなっているだけだろうか? 目が座っているわけでもない。
案外、素の状態なのかもしれない。
「とりあえず……望、お酒を楽しもうや? まだ、お前は一口しか飲んでへんやろ?」
「んー、まぁな……じゃあ、もう少しだけ飲もうかな?」
そう言いながら、二口目を口にする望。
いくらお酒に弱い人でも、たった二口で酔うなんてことはないだろう。
だが、望はその二口目でいつも掛けている眼鏡を外し、色っぽい瞳で雄介を見上げてきた。
その望の視線に、雄介は動揺し、危うく椅子から転げ落ちそうになってしまう。
そんな望の様子に、喜んでいいのか、どうなのか、よく分からない状況に陥る雄介。
普通の恋人同士なら、そこは素直に喜べるところなのだろうが、いつもの望は素直じゃないのに慣れてしまっているので、雄介の方が調子を狂わされそうな感じだ。本当に今日の望は、普段では考えられないような行動をしている。
「雄介……」
とりあえず、名前を呼ばれた雄介は、普通の汗とは違う汗を拭いながら望に視線を合わせる。
「ん? 何?」
「俺のこと、抱いてくれねぇの?」
今日の望はストレートに雄介へと問いかける。
まだ動揺中の雄介。とりあえず、ひと呼吸置いて、
「ま、まぁー、とりあえずな……酒飲んでからにせぇへん? せっかく二人きりで飲んでおるんやしな。それに、今日は酒飲んで楽しもうって言うたやんか……」
「まぁ、そうだったな。確かに俺は明日休みだしな。一応時間あるんだから……ゆっくり酒でも飲んでから楽しんだ方がいいよな?」
「そういうこっちゃ……とりあえず、俺のほうは二本目行くでー。ビールっていうんは早よ飲まへんと不味くなってまうしな……望も早よ飲みや……」
雄介は、とりあえず望のペースに巻き込まれないようにしながら、冷蔵庫の方へと向かう。
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