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ー海上ー12

 まだ冷蔵庫の前にいる雄介に対して、望は雄介の方に体を向けて、 「なぁ、こんな俺でも、お前は俺のことが好きなのか?」  本当に今日の望は、普段言わないようなことを聞いてくる。  その望の言葉に、今開けていたプルタブを開け損ねた雄介だったが、とりあえずもう一度プルタブを開け、ビールを一口口に含むと、笑顔を望の方へと向け、 「そりゃー、もう! 今も望のことが好きに決まってるやろ?」  雄介はそう言いながら、望が座っているリビングテーブルの方へと戻ってくる。 「その証拠は?」  望はそう言いながら雄介に視線を向ける。  だが雄介の性格上、望の顔に突っ込みを入れたくて仕方がないようだ。だが今は真面目な話をしているのだから、ここは突っ込んではいけないと思ったのか、雄介は深呼吸をして落ち着かせた。 「……ってか、いきなりどないしてん? 酒飲んでもうて不安になってもうたんか?」  雄介はそんな望の言葉に逆に心配になったのか、望を覗き込むようにして見つめる。  だが、望は雄介が心配していることに気づいているのか、気づいていないのか、そこのところは分からないが、ムッとした表情になると、 「人が言ってる質問にちゃんと答えろよ……」  そう言うのだ。 「あー、スマンかったな……。せやな……証拠やろ?」  今更「好きな証拠」と言われても、キスとか抱くとか以外に何かあるのだろうか。それだけだと何だか当たり前すぎてつまらない気がする。  雄介はその答えを探すべく腕を組んで考えているが、本当にその二つしか思い浮かばない。  しかし次の瞬間、雄介は何かを思い出したかのように手を叩き、 「もしかして……また、共通する物が欲しいとか?」  雄介は答えが分かったと言わんばかりに、望に向かって笑顔を向けたが、望はまだいい顔をしていない。どうやら、今の雄介の答えは違うらしい。  しかも望の表情は曇っている。  さすがにその表情に雄介が気づかないはずがない。 「……へ? え? 違うんかな……?」 「当たり前だろ? 俺的には全然、お前がこの前くれたドッグタグだけで十分なんだからさ」  望はそう言いながら、首に掛かっているドッグタグを手に取る。 「せやったら、望が言う証拠ってなんやねんなぁ?」 「本当に分からねぇのか?」

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