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ー海上ー55

 望と雄介の家に到着すると、裕実は思わず驚いたように声をあげた。 「もー、着いちゃったんですか?」 「まぁ、望の家って病院からそんなに遠くないからな」  と和也が軽く応じ、三人は車を降りた。  玄関に立つと、望は無言で鍵を開け、その後に続いて裕実と和也も家の中へ入っていった。 「お邪魔します」  裕実は部屋を見渡しながら慎重に歩を進めた。その様子に気づいた和也が怪訝そうに声をかける。 「お前……何を警戒してるんだ?」 「和也と望さんの会話から推測すると、何かこう怪しいものがあるんじゃないかと思いましてね」  その真剣な言葉に、和也は吹き出した。 「いきなりそんなものがあるわけねぇだろ?」 「確かに望さんと和也は分かっているかもしれませんが、僕にとってはここ、初めての場所ですよー。だから、警戒するに決まってるじゃないですかー!」 「え? 何か家に仕掛けでもあるかと思ってるのか?」 「あると思ってます!」  裕実は真剣に答える。和也は苦笑いしながら応じた。 「無いに決まってるだろ。忍者屋敷とかからくり屋敷じゃないんだからよ。まぁ、近いもんはあるのかもしれねぇけど……」  最後の部分は少しぼそぼそとつぶやく和也。  二人は話しながら、先にリビングに向かった望の後を追った。望は相変わらず不機嫌そうにテレビをつけ、一人画面を見つめている。和也と裕実がリビングに入ると、テレビの音が部屋に広がった。 「とりあえず飯だな。望……この鉄板使っていいか?」 「ああ、構わない……」  望は一応反応はしてくれたものの、その不機嫌さは変わっていない。和也はため息をつき、裕実に向かって小声で何かを伝えた。 「分かりました! 自信はありませんが、頑張ってみますね!」 「ああ、頼む。今の望の機嫌を直せるのはお前しかいないんだろうしさ」  和也はそう言って、夕飯の準備を始めた。一方、裕実は望の機嫌を直すべく、彼が座るソファへと向かう。 「望さん……」  笑顔で声をかける裕実。望はちらっと彼を見るが、何も言わずにテレビに視線を戻す。 「何を見ているんですか?」  裕実はそのままテレビ画面に視線を移すと、思わずクスリと笑ってしまう。 「望さんって、こういう番組が好きだったんですか? 僕からしたら、意外だなーって思ったんですけどー」  望は一瞬戸惑った表情を浮かべたが、次第に少しだけ肩を落とし、軽く笑みを浮かべた。 「まぁ、たまにはこういうのも悪くねぇだろ?」

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