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ー海上ー56

 望はお笑い番組の面白さに気づき、我慢できずに腹を抱えて笑い出した。隣で微笑む裕実の反応に、さらに笑いが止まらなくなっているようだ。そんな二人の様子に、キッチンで料理をしていた和也が声を上げた。 「あー! ちょっ、お前等なー! 人が一生懸命、飯作ってるのに……お笑い番組を見てるなんてズルいぞー! しかも、それさ、俺が一番好きなお笑い番組なんですけどー!」  和也の悔しそうな声に、裕実が軽く手を振りながら返事をした。 「和也はご飯作っていてくださいね。僕、お腹空いてるんですから」  その一言で、和也は思わず黙ってしまった。お笑い番組を観たい気持ちは強いが、今の裕実の頼みは和也にとって一番大事だ。かつての和也なら、料理よりも番組を優先していたかもしれないが、今は何よりも裕実を優先するようになっている。 「くそー……仕方ねぇな」  と、和也は少し悔しそうに言いつつ、料理作りに集中し始めた。お笑い番組を見逃した悔しさから、スピードを上げて調理を進めるが、料理が完成する頃には、すでに番組は終わっていた。エンディングロールが流れるテレビを見て、和也は深いため息をついた。 「あー! 案外、お笑い番組って面白いのな……久々にこうお腹抱えて笑ったような気がするわぁ」  望は久しぶりに心から笑って、気持ちがすっきりした様子でソファから立ち上がった。その一方で、キッチンの和也は不機嫌そうな顔をしていた。 「ちくしょう……俺が一生懸命作ってる間に、一番面白いところを見逃すとか……」  望は和也の様子を見て、にやりと笑いながら肩をすくめた。 「ま、たまには俺が先に楽しんでもいいだろ? お前がいつも俺らをからかってんだから、これくらいはいいじゃねぇか?」  和也はしばらく黙っていたが、最終的には笑い出した。 「そうだな。まぁ、次は一緒に見ようぜ! その時は俺が一番笑わせてやるからな!」

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