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ー海上ー58

「やっぱり、望さんはご飯いらないんですよね?」  そう裕実は、望のことを心配しながら和也に問いかけていた。 「大丈夫なんだろうよ。しかも、もういい大人なんだからさ……自分でお腹が空いたとか分かるだろ? 望はお腹空いてないって言ってんだから、それはそれでいいんじゃねぇのか? それに、食いたくなったら食うんだと思うしな……」 「ですよねー」  和也の言葉に一応は納得するものの、やはり望のことが心配な裕実。  それに気づいた和也は再び望へと声を掛けた。 「なあ、望……俺の方からはもう何も言わないけどさ、裕実がなお前のこと心配してるみたいだぞ」  確かに、和也が言うことなら、望は聞かないかもしれないが、なぜだか分からないけれど、たまに望は裕実の言葉には耳を傾けることがある。  望はその和也の言葉に、和也の方へ視線を向け、ついでに裕実の様子もうかがっているようだ。  その裕実の様子を見て、望は和也の言っていることが本当だと気づいたのか、仕方なさそうに息を吐くと、 「分かったよ……食べる。でも、本当に少しだけでいいからな」  望のその言葉に反応したのは、和也ではなく裕実だった。  裕実はその望の言葉に笑顔を見せると、和也から離れて望の方へ駆け寄った。 「なら、望さん! 一緒に食べましょうよ!」  裕実は嬉しそうに望に告げる。 「ああ、分かってるよ……」 「じゃあ、テーブルの方に行きましょうか?」  裕実は望の腕を引き、テーブルまで連れて行った。 「望もきっと食うんだろうと思って、三人分用意しといて良かったぜ。それに、望……焼肉っていうのはな、一人で食うよりみんなで食った方が楽しいんだぜ」  和也も、望と一緒に食べることになったからか、嬉しそうだ。 「そうですよ……! 一人で食べるより、みんなで食べた方が楽しいんですからー!」 「分かったって……」  そんな会話をしながら三人は席に座り、手を合わせて、 「いただきます……」  三人はほぼ同時に言った。  それに微笑んだのは裕実だ。 「みんな一緒だと楽しいですね」 「裕実ー、早く食べないと先に食っちまうぜー」 「あー! 和也ってば本当に意地悪なんですね! 僕のために用意してくれたんじゃないんですか!?」  裕実からの冷たい視線に気づいた和也は、体をピタリと止めた。 「お前ってたまにボディーパンチ喰らうぐらいの言葉言うよなぁ」 「何がですか? 僕は普通のことを言ってるだけですよ」

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