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ー海上ー61

「そういうことだったんですかー。雄介さんがそうならないことを願うばかりですね」  裕実はそう言いながら、望に向かって笑顔を向ける。 「ああ、そうだな。親友も大事なんだけど、でもさ、恋人とは何か重みが違うっていうのかな?」  望の言葉を聞いて、和也はクスリと笑って、 「望がそう考えるようになったってことかぁ。ホント、雄介って幸せもんだよな?」 「べ、別にそうじゃねぇよ……」  そう望は顔を真っ赤にしながら言うが、それは逆効果だった。 「やっぱり、そうなんじゃねぇか」 「望さん……そこはバレバレですよ」  裕実も和也も、望のその言葉にクスクスと笑い始める。 「お前らなー! 二人して言わなくてもいいじゃねぇか!」 「望の過去はそうだとしても、今は幸せなんだからいいんじゃねぇの?」 「……え? あ、ああ……まぁ、そうだな……」  望は顔を赤くさせながら俯き、静かに箸を置いて「ごちそうさま……」と言うと、一人でソファの方へ向かい、テレビを点ける。 「和也……そんなに望さんのこと、いじめちゃダメですよー」  裕実は小さな声で和也に伝える。 「何言ってんだ? 俺からしてみたら、十分に望とはふざけているつもりなんだよ。望が本気で嫌がってるんだったらやめるんだけどさ、望の方はそんなこと一回も言ったことなかったしな。ってことはさぁ、望は俺の性格とかっていうのを認めてくれてるってことだろ?」 「そういうことだったんですか。二人とも、お互いのこと分かってるってことなんですよね?」 「まぁ、多分な……。一度だけ本気で喧嘩したことがあったけど、あん時、最初に『もう一度、和也と一緒になりたい』って言ってきたのはアイツだったからな」 「そこは意外ですね」 「だろ? 俺はその望の言葉に一瞬びっくりしたんだけどさ、でも、俺も望のことが好きだったから、すぐに返事したけどな」 「そういうことだったんですか」  二人の会話が途切れたところで、望の声が聞こえてくる。 「マジかよ……!?」  その声と共に、望はテレビ画面を食い入るように見ていた。  その望の声に気付いた和也と裕実は、 「いきなり、どうしたんだ?」  和也がソファにいる望に声を掛けても、望からの返事はなかった。  和也と裕実は視線を合わせ、首を傾げると、今度は望が見ているテレビ画面に視線を向けた。

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