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ー海上ー62

 望はテレビのニュースを食い入るように見ていた。画面右上に表示されているテロップには「爆発事故発生 怪我人が数人いる模様」と書かれている。それを目にした和也は、すぐに反応する。 「……爆発事故じゃねぇか……場所はどこだ……」  テレビ画面の左側には「Live 夏見市」と表示されていた。夏見市は、春坂市の隣町だ。 「場所は隣町か……じゃあ、俺たちも行かないとな」  そう言う和也に対して、裕実は違う見解を持っているようだった。 「和也……望さんはどうやら違うことを言いたいみたいですよ。見てください! 今、テレビに映ってるのは雄介さんのレスキュー隊みたいです」 「はぁ!?」  和也は驚いて再びテレビに視線を移す。確かに春坂市の消防車が映し出されている。 「最悪だな……」 「最悪って、どういうことですか?」 「さっき望に聞いただろ? 今日は親友の命日なんだって……もし、ここで雄介も同じ目に遭ったらどうなるか……」  和也は冷静に状況を分析しているつもりだったが、裕実はその言葉に激怒してしまった。  裕実は勢いよく立ち上がり、和也に向かって大声を上げる。 「何言ってるんですか!? 雄介さんはどんなことがあっても死にませんからね! どんなことがあっても、必ず雄介さんは戻ってきます!」 「……ってかさぁ、お前がそんなにキレることないだろ? 俺は『最悪』って言っただけだし、誰も雄介が死んだなんて言ってねぇよ……」 「確かに……あり得るのかもな……」  望がぽつりと呟いた。その声に、和也と裕実はハッとし、冷静になって再び席に腰を下ろした。  部屋の中は、嫌なニュースのせいで重苦しい雰囲気に包まれていた。  和也は食器を足早に片付け、裕実とともにソファに座っている望のもとへ向かった。二人はソファの背後に立ち、望と一緒に大画面のテレビを見上げる。  暗い夜に映し出される爆発現場の映像は、赤い炎が轟々と燃え盛り、二人は改めてその恐ろしさに息を呑んだ。  その時、二度目の爆発が画面に映し出された。爆発音に反射的に身をかがめた和也と裕実は、事故現場の状況に息を詰まらせる。  アナウンサーの声が緊迫した空気を伝える。 「今の爆発で負傷者が出た模様です! 情報によると、レスキュー隊員の一人が負傷したとのことです!」  その瞬間、望は急にソファから立ち上がった。もう居ても立ってもいられなくなったのだろう。

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