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ー海上ー64

「確かにそうですよね。例え自分が冷静じゃなくても、携帯は望さんと雄介さんを繋げてくれる大事なものですからね」  そう裕実が言った直後、部屋内に望の携帯の着信音が鳴り響く。  その音に体をビクッとさせる裕実と和也。  それも当然だ。今までの流れ的に、望の携帯が鳴るということは、何か雄介にあったのかもしれないと思ったからだ。  だが部屋には望の姿はない。そして、望の携帯に電話をしてきている人物が気になる和也は、覗き込むようにして電話の相手を確認する。  そこには『雄介』と表示されていた。  望がいないため、和也は躊躇しつつも、雄介だと分かった途端、悪いと思いながらもその電話に出る。 「もしもし……ごめん……望じゃなくて……」 『あー、和也か? 望はどないしてん?』  電話口から聞こえてくる雄介の関西弁に、和也はほっと安心する。 「あ、ちょ、ちょっと待ってろよ……今、望を出させるからさ」  和也はそれだけを告げると、慌ててリビングを飛び出し、大声で望を呼ぶ。 「望! 雄介から電話だ!!」  その声に、望は顔色を変えてお風呂場から飛び出してくる。  どうやら望はお風呂に入っていたようだ。  しかも、今の和也の言葉に反応して、体も拭かずに珍しくそのままで出てきてしまった。  和也は望のその姿に何も触れず、携帯だけを望に向かって投げ渡すと、すぐにリビングへ戻っていく。  その頃、望は和也から投げ渡された携帯を耳に当てて話し始める。 「もしもし……」 『望かぁ?』 「ああ」 『今日のニュース見てたんやろ? お前のことやから心配してると思って、早く電話したかったんやけど、事故処理とか色々あってな……完全に終わったのは今さっきや。せやから連絡が今の時間になってしまったんやけど……スマンな、心配させてもうて……』  きっと雄介は電話口で、望に向かって頭を下げているのだろう。 「ああ、そういうことだったんだな。それに、心配するのは当たり前じゃねぇか! ニュースでレスキュー隊員が一人負傷って言われてから、ずっとお前じゃねぇのか? って思ってたんだからな! どれだけ俺が心配してたか、お前には分かってねぇだろうな!」  今まで黙っていた望だったが、雄介の声を聞いて安心したのか、今まで心配していた想いを雄介にぶつける。 『ああ……ホンマにスマンな。望の気持ち、俺には分かってるからな……』

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