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ー海上ー66

 とは言うものの、やはり雄介と会ってしまったのだから、さすがの望でもすぐに離れられるわけもなく、そう返事をしていたにもかかわらず、雄介から離れるまでに数分かかってしまっていた。 「雄介……今日はゆっくりと休めよ。俺のことは気にすんな」 「ああ、ありがとうな」  雄介は笑顔で望に手を振り、家の中へと入って行った。  それから一週間後、和也と望が前に決めていた一泊二日の海への旅行へと四人で向かうことになった。今回も和也の車での移動だ。 「前回は山だったけど、今回は海かー!」 「まあな……でも、今回は望の方もノリノリだったんだぜ。前回の時はスキーができなかったから本当に嫌だったみたいだけどさ」 「うるせぇ。まあ、海は山と違って泳げるから平気なんだよ」  望が後部座席から言うと、和也の隣に座っていた裕実がぼそりとつぶやいた。 「望さんはまだスポーツができるからいいじゃないですかー! 僕は運動音痴なのでスキーも水泳もできないんですよ。」 「でも、いいだろ? スポーツは俺が教えてやってるんだからさ」  そう言いながら、和也は裕実の頭を撫でた。 「ですね! 和也に教えてもらうと、運動音痴も克服できる気がしますしね。とりあえず、スキーはできるようになりましたよね?」 「まあな」  和也は裕実に向かって笑顔で言うと、今度は雄介に話を振った。 「あのさ……雄介。この前の爆発事故でお前の仲間が怪我したんだろ? お前も危なかったんじゃねぇのか?」 「まぁ、確かにそうやったかもしれへんけど、そりゃな、俺には望がおるわけやし、それに、この間そのことについて望と約束したばっかりやったしな……『仕事では絶対に死なへん』って。あ、まぁ……あの爆発事故でウチの署から怪我したのは一人だけやったし。現場では多数の人たちが負傷しておったけど、怪我人が出ただけで幸い死者はおらんかった。テレビの方は案外大袈裟に言っとったみたいやからなぁ」 「まぁな……それなら良かったんだけどさ」  和也はそこで意味ありげに言葉を止めた。車内が静まり返る。しばらくその静かな空間が続いたが、和也はひと息ついてから、 「望……この前の事故があった時、お前が話してたことを雄介にも話してやれよ」 「……へ? いいよ。あのことを思い出したくないんだ」 「そっか……それなら、俺が雄介に話してもいいか?」 「ああ、まぁな」  望は少し迷いながらも、和也に話を任せた。

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