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ー海上ー79

「そりゃま……そうやねんけどなぁ」  それでも雄介はまだ納得していないようだ。 「じゃあさぁ、例えば、仕事でも望に何も言わないで大阪に行ってしまったお前と、望の場合にはちゃんと雄介に仕事でアメリカの方に行くって言ってる望と、どっちの方がいいんだよ。まぁ、これは自分の立場になって考えるんだぞ」  和也の言葉に、雄介は少し考え込む。 「お前の方は、望に何も言わずに大阪に行っちまって……望はどんな気持ちだったと思う? とりあえず、望はお前がいなくなってから相当心配してたし、毎日のようにどれだけイライラしてたか……それに比べて望の方はちゃんと雄介に言ってから行こうとしてるんだろ? お前の前の行動に比べれば全然マシなんじゃねぇのか?」 「あの時だってな……俺は考えに考え抜いた結果やったんやからな」 「雄介……今の俺はそんなことをお前に聞いてんじゃねぇんだぜ。じゃあさ、質問を変えようか? 雄介みたいに、例え仕事だとしても黙って行ってしまう望と、今回みたいにちゃんと『仕事で一週間いなくなる』って話すのと、どっちがいいんだ?」 「そ、そりゃあ、ちゃんと言うてくれて行った方が心配しないっていうんかな?」 「そうだろ? だから望は、雄介に『仕事で海外に行く』ってちゃんと話したんだよ……。 まぁ、そういうことだな」  和也は雄介の肩をポンと叩くと、前に歩いている望と裕実の間に入り、今度は裕実の肩に腕を回す。 「まぁ、せやな……和也の言う通りやんな! 何も告げずに行かれるより、言ってもらってから行ってもらった方がええってことやんな」  雄介は一人でぼそぼそと呟き、いつものように明るい表情を取り戻す。そして、望の隣に行くと、雄介は望の腰に腕を回す。 「おい! こらっ! こんな所で腰に腕回すんじゃねぇよ。恥ずかしいじゃねぇか……」 「平気やって……今、時間的にも特に廊下とかに人おらんやしな」  雄介は望に向かって笑顔を見せると、望は赤い顔をしながらも、急にいつもの雄介に戻ったようで安心したのかもしれない。 「雄介ー」  和也は雄介に顔を向けて、 「やっぱ、温泉でシたくねぇ?」 「それ、ええアイデアやんなー! その意見に乗った!」  それを言った直後に、雄介と和也は急に大声を上げる。 「ちょ、痛っ! しかも、ええ所に入ったやんか」 「裕実……お前もだぞ……」 「お前達が変なこと言うから、痛い目にあったんだよ」

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