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ー海上ー84
和也は頭を冷やすためにもエレベーターを使って屋上へ向かう。
頭を冷やすために屋上へと来た和也だったのだが、屋上へと登ると空には億千という星が地球上へと光り注いでいた。
星の光というのは何光年も前の光が今地球へと降り注いでいるのだから、本当に素晴らしいものだ。
人というのは何十年しか生きられないのだが、星たちはそんな前から生きている。そして今やっとその光が地球へと来ているということなのだから。僕たちが死んだ後もその光は変わらないだろう。
和也はその星空を眺めていると、無数にある星たちが何かの形に見えるのは気のせいであろうか。
これが世に言われている天の川ってやつなんだろうか。
「これが、まさか!? 天の川っていうやつなのか!? すっげぇー! 綺麗なもんなんだなぁ」
そう和也は屋上にある手すりに手を置くとうっとりとした様子で空を眺める。
ここは東京とは違って人工的な光は少ない所。だからなのか、邪魔する光など一切なく星が無数に見えるのであろう。
東京の夜景は綺麗だとは言うのだけど、それでも人工物と自然の物とではかなり違うのかもしれない。
いや、かなり違う。寧ろ比べてはいけないくらいなのだから。
そう、自然が作り出す物というのは人工的に作り出した物よりも魅力的で神秘的な物が多い。
自然が作り出すのだから、よりそう感じられるのかもしれない。
「あー、こういうのって裕実も見たかったかも……。裕実と喧嘩しなきゃ裕実と一緒にこの星空を見ることができたんだろうけどな。ホント、俺ってバカなんだよなぁ。あー! くそっ!!」
和也はそう言いながら、今日は珍しく自分のことを責めているようだ。
頭をぐしゃぐしゃと引っ掻き、和也にしては珍しく落ち込んだような表情もしている。
その頃、望と裕実の方は自分たちの部屋で和也と雄介のことを待っていた。
「望さん……流石に和也と雄介さん、遅くないですか?」
「確かに、そうだよな」
望たちがお風呂から上がってからは、優に一時間は経過している。
流石に怒っていた望も、一時間もここに二人が帰宅していないことに心配しているようだ。
だが、望の性格上自分から探しに行くってことはしないだろう。
「望さん! 和也たちの様子見に行きませんか? きっと、ここに戻って来れないんだと思いますよ! 僕がもし和也や雄介さんの立場でしたら、ここに戻って来るのは気まずいと思いますしね」
その裕実の言葉に、望は裕実の方へと顔を向ける。
確かに裕実が言っていることは一理あるのかもしれないと思ったのであろう。
「じゃあ、お前は和也のこと探しに行くのか?」
「はい! 僕はどんな和也でも好きですからね。本当はあまり喧嘩とかしないで、一緒にいる時は楽しみたいと思っているのでね。僕は和也のことを探しに行きますよ。今はみんなでお風呂に行ったんで、携帯はここに置きっぱなしで行きましたしね。なので、和也たちのことは携帯なしで探さなきゃなりませんよね? 望さんはどうなさるんですか?」
裕実は望の顔を見上げ、覗き込む。
「お、俺はだな……」
そう裕実から顔を背ける望。
「望さん! 我慢しちゃダメなんです! 雄介さんのことが本当に心配なら、我慢しないで探しに行ってあげてくださいよ! 僕がそう言ってるんではなくて、望さんがそう言ってるんですよ! 望さんの顔に『雄介さんのことが心配で仕方がない』って出てるんですからね」
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