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ー海上ー85
望は裕実にそう言われると大きなため息を漏らすのだ。
「あー、分かってるよ。お前の言う通り、俺も雄介のことが心配は心配なんだよ。だけど、俺の性格が邪魔してるっていうのかな?ああ、まぁ、体が動いてくれねぇっていうのかな? つくづく自分の性格が嫌な性格だって思ってくるぜ」
そうは言ってるものの、望は自分に気合いを入れて立ち上がるのだ。
その望の様子に、裕実の方はクスリとすると、
「好きな人に捧げるパワーっていうのは違いますよね?」
望は裕実のその言葉に笑顔を向ける。
「まぁな……」
きっと、これが和也なら望はそう簡単に動くわけないのだが、何でか裕実がそういうと望という人物は結構普通に動き出すのかもしれない。
「では、望さん! 二人のことを探しに行きましょう!」
「ああ」
裕実の方は先に部屋を出ると、望の方もほぼ一緒に部屋を出る。
「もう、流石にお風呂場からは上がってますよねー?」
「そうだな……もし、出てなかったら流石に逆上せちまうだろうしな?」
「二人が行く場所ってどこか思いつきます?」
「んー……」
と、望は手を顎に当てて考えていると、望の目の前に『こちらに卓球場あります』という看板が目に入ってくるのだ。
「卓球場は?」
「あの二人ならあり得そうですよねー? では、行ってみましょうか!」
裕実は望の意見に同意すると、看板に書いてある通りにその方向へと向かうのだ。だが、そこには雄介どころか客も誰一人いない。
「いませんでしたね……」
「あの二人ならここにいると思ったんだけどなぁ?」
「ですよねー。こういう所に来たら『温泉って言ったら卓球だろー!』とかって言ってそうですもんね……でも、予想は外れちゃいましたね」
「ああ、俺もそう思ったんだけどなぁ」
二人はそう言いながら卓球場を後にする。
「後はどこにいると思います?」
「そうだな……」
と再び望の方は考えてみるのだが、もう他に思い付く場所がないようだ。
「んー……卓球場以外であの二人がいそうな場所ってもう思い浮かばないんだよな?」
「もし、望さんが和也たちと同じ立場ならどこに行きます?」
「雄介たちと同じ立場かー」
望はその裕実の言葉に答えるかのように、もし自分がこうなってしまった場合、どこに行くかを考えているようだ。
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