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ー海上ー87
裕実は和也に抱き締められ、幸せそうな表情をしていたが、ふと我に帰ると、
「和也……雄介さんは?」
「ん? 雄介? ……雄介のことは知らねぇよ……え? まさか、雄介も部屋に戻ってねぇのか?」
「はい! だから、望さんと探しにきたんですよっ!」
「……へ? 望も一緒だったのか?」
「それって、どういう意味です? そんなに驚くようなことなんですか?」
「いやぁ、あの望がまさか雄介のことを探しに来るなんて思ってもみなかったってことかなあ?」
「僕がっていうのか、そうそう! 望さんだって雄介さんのことが心配だったんで、一緒に探しに来たんですからね! まぁ、僕が望さんのことを引っ張り出してきたようなもんですけど……」
最後の方は望には聞こえないような声で和也にだけ伝える。
「だよなぁ。まぁ、望から率先して探しに行くような性格でもないしな」
と和也は裕実の言葉に納得すると、その場に立ち上がる。
「……で、雄介さんはどこにいるんですか?」
「雄介? 雄介と別れたのはまだ温泉だったぜ」
裕実はそれを聞くと大きな声で、望に今和也が言っていたことを伝える。
望はその言葉で直ぐにエレベーターへと乗り込み、裕実が言っていた通りに温泉の方へ向かうのだ。
普段の望なら一人で雄介のことを探しに行くなんてしないのだろうが、和也の話では最後に見た場所が温泉で、今のところ考えられるのはそこしかないと思ったのかもしれない。
向かっている間、望の中では嫌な予感がしているようだ。焦ったような表情をしているからだ。
和也の話では、最後に雄介を見た場所が温泉というのが気になる。
望は温泉の入浴施設まで来ると、脱衣所に通じる引き戸を思いっきり開け、その音が響き渡る。
走ってきたせいか息を切らしている望。そして、ゆっくりと入浴場へと足を踏み入れるのだ。
「雄介……まだここにいるのか?」
そう望は普通の声の大きさで呼びかけるが、脱衣所からは声が返ってこない。
むしろ、もうこの場所には人の気配すら感じないほどだ。
「いねぇのかな?」
望はもうここに誰もいないのかもしれないと思いながらも、何故かこの場所が気になっているようで、とりあえず自分達が利用していたロッカーの方へと向かう。
すると、自分達が利用していたロッカーの前の床に、雄介が倒れている姿が目に入ってきた。
望はすぐに雄介へと近寄り、声を掛ける。
「雄介!」
すると雄介はゆっくりと顔を上げ、
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