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ー海上ー90
「雄介ー、言っておくけどな……今日は体を休めにここに来てるんだから望とヤるんじゃねぇぞ……」
「分かっとるがな。 そういう風に言う和也だって裕実とヤるんやないで」
「分かってるに決まってるだろー」
雄介と和也の方はいつもの調子に戻すとベッドの方へと向かう。
「裕実ー。 一緒に寝たいんだったら寝てもいいし、もう少し経ってから寝たいんだったら寝てもいいしな」
「何言ってるんですかぁ? 僕も和也と一緒に寝ますよ」
裕実の方は和也の言葉にそう答えると、笑顔で先に行ってしまった和也のことを追い掛けて、和也と一緒にベッドの方に潜り込むのだが、雄介の方はというと頭を掻いて悩んでいるようにも思える。
そう望は裕実のように呼んだら来るような性格ではない。それに家では望の方が先に布団に入っている方が多いのだから、雄介が先に布団に向かうのは変な感じがしているようだ。
雄介は隣にいる望に一生懸命何か声を掛けようとしているのだが、なかなか言葉が思い付かないようだ。
だが、そんな様子の雄介に気付いたのか、望の方はいきなり立ち上がると和也達の隣にあるベッドへと向かうのだ。
すると雄介は何も言わずに望の後に付いてベッドの方へと向かう。
これで今日は二組のカップル共に丸く収まったのかもしれない。
雄介は布団を望に掛けると、和也達には見えないように望のことを抱き締める。すると、その雄介の行動に望が拒否することなく、今日は雄介に大人しく抱かれているようだ。
そして望は雄介にだけ聞こえるような声で、
「俺……本当に雄介の事が好きになっちまったんだから……責任取れよ……」
そう言いながら望は体を丸める。
雄介はその望の言葉に微笑むと、
「分かっとる……」
と雄介の方もそう返し、望の体を優しく強く抱き締めるのだ。
そして次の日も海へ遊びに出掛けた四人だったのだが、誰がナンパしてこようと和也ははっきりキッパリと断っていた。
もう裕実も望も悲しませることはしたくないとでも思ったのであろう。
だからなのか、二組のカップルはその日は本当に恋人気分を満喫したようだ。
そして二泊三日の旅は終わって、四人は行きと同じように和也の車で東京へと向かう。
次の日からはまた現実世界へと戻って来て、いつものように働き始めるのだ。
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