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ー海上ー91

 それから一週間後。  望が旅行の時に言っていたように、望と和也が研修の為に一週間だけ日本を離れる日が来てしまった。  今日は和也の恋人である裕実も、望の恋人である雄介の姿はない。 二人共、今日は仕事で望達のことを見送りに来ることができなかったようだ。  そして二人は今回、飛行機ではなく船で行くことになっている。  だから船着場まで、望の父である裕二に車で送ってもらうことになっていた二人は、病院までは車で来ていた。  それからは裕二の車へと荷物を乗せると、望も和也も裕二の車の後部座席へと腰を下ろす。 「望は助手席でいいんじゃないのかな?」 「別にいいよ……俺は後部座席の方がいいんだからさ」  そう、相変わらず父に対しては冷たい態度を取る望。  しかし二人の仲がこんな状態だと困るのは和也だ。  それに望の父親、つまり院長の前では流石に望とふざけることなんてできないのだから。  車内はそういった理由で、いつもより静かに走っているようにも思える。  だが流石にこの空気を読んだ望は仕方なしに裕二に声を掛ける。 「なぁ、親父……なんで今回俺達はアメリカの方に行かなきゃなんなかったんだ?」 「そりゃ、君達には日本の医療より先に進んでいるアメリカで勉強してもらいたかったからさ。 確かに日本も医療に関してはどんどん進み始めてきているのだけど、アメリカからしてみたら全然遅れているからね。 そういった技術みたいなのも持って帰って来て欲しいっていうのかな? そこで、前に私がアメリカにいる時に働いていた病院で色々と学んで来て欲しくてね。」  やはり裕二が言っていることというのは間違ったことは言っていない。  その裕二の言葉に望は納得すると、後部座席へと背中を預けるのだ。  そして窓の外を流れる景色を眺めながら、望の方は何か考えている。  確かに一週間前には四人で休日を楽しんだ。 だが今日は違う。  望はそんな一週間前のことを思い出しながら息を吐く。  今回の場合には仕事で出掛けるのだから、やはり憂鬱な感じだ。  しかし、やっと望は雄介のことが好きになってきたというのか、気持ちも大分雄介のことが好きになってきたというのか、今一番自分が幸せ絶頂期の時に何も一週間雄介と会えないのは本当に辛いとも思っているのかもしれない。  流石の望も一週間も留守にすると思うだけで、雄介のことが心配で寂しいのだろう。

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