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ー海上ー112

 その望の行動に裕二の方は一つため息を吐くと、頭を掻きながら椅子へと座るのだ。 「ゴメンね……梅沢君。私達親子の恥ずかしい部分を見せてしまって。昔から息子は私に対してはあんな態度しか取らない子だったのだよ。そう、私は仕事が忙しくて望の事は母親の方に任せっぱなしだったからね。だからなのかな? 小さい頃から私が忙しくてこう望と向き合う事が無くて、望は私にああいう態度しか取らなくなってしまったのだよ」  そう和也に話す裕二。  その裕二の言葉に和也は、 「僕には、その……父親と子供の関係って分からないんですよね。僕は母親にしか育てられなかったのでね。父親は僕が小さい頃に死んだって聞かされていたので……」 「そうだったんだね。それはゴメンね」  そう裕二は和也に向かって微笑むと、 「まぁ、あんな息子だけど……君とは仲がいいみたいだから、これからも望の事頼むね」  裕二はそう言うと席を立って診察室のドアを開けに向かう。 「ちょ、院長! 僕にそこまでしなくていいんですよー! 僕は患者さんではないんですからね」 「でも今は私の患者さんだったろ? 確かに仕事の時はこんな事はしないのだけどね」  その裕二の言葉に和也は気付いたのであろう。そこは素直に、 「分かりました。ありがとうございます」  和也は院長に向かってそう言い、一礼だけすると診察室を出て行くのだ。  そして和也の方も部屋の方へと戻って行く。  部屋へと入ると、望は机に向かっていた。  和也は望の背後へと向かうと、望の肩を軽く叩く。 「な、望……今日はお前の家に泊まってもいいか?」  その和也の言葉に顔を上げる望。 「今日は流石にダメに決まってるだろうが……それに、明日は休みで……」  望は何故かそこまで言葉を言うと急に言葉を止めてしまう。 「そっか……明日は雄介が帰って来るんだもんな。確かに望の言う通り俺はお邪魔になるんだしな。だけど、お前さぁ、前に人に狙われた事があるんだろ? だから、友達としてお前の事一人にしておけねぇっていうのかな?」  望はその和也の言葉で何かを思い出したようだ。 「分かってるよ……お前の気持ち……。ホント、俺っていうのは心も体も弱いもんなんだな。誰かに助けてもらわなきゃなんねぇんだからよ」 「あのなぁ、人間っていうのは人に助けられて生きていくもんなんだぜ。一人じゃあ生きてたって楽しくねぇだろ? だから、俺がそう言ってんだから、そういう時には俺に甘えてくれたっていいんだよ」

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