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ー海上ー120
そう言って望はベッドから降りようとしたのだが、見えないせいか間隔も掴めずにベッドから落ちそうになるところを雄介が腕を伸ばして助けた。
「お前なぁ、ほんまに眼鏡がないと危なっかしいやっちゃなぁ」
「ゴメン……マジで見えてねぇんだよ」
「そないに見えてないん?」
「ああ、そこはマジだからさぁ。だって、お前の顔さえもぼやけてしか見えてないんだからな」
「そういうもんなんか? ほなら、俺やって確かめる為に俺に触れてみるか?」
「いや……いいに決まってるだろ? それに、目は悪くとも耳はちゃんと聴こえてるんだからな。それに隣にはまだ和也がいんだぞ。和也の事起こして、さっさと眼鏡探しに行くぞ!」
望の言葉に、雄介はため息を吐くと、
「分かったって……」
「じゃあ、まずは和也の事起こさないとだよな?」
「もう、和也の方は起きてるんと違う? こっそり起きて俺等の会話聞いてたりしてな」
雄介の言葉に、望は顔を真っ赤にする。確かに和也は望より早く起きることが多いから、既に起きている可能性は高い。
「とりあえず、お前……和也の事起こして来いよ。俺はその間に風呂に入って来るからよ」
「ああ、まぁ、そうやな」
そう言って雄介は、和也がいる隣の部屋へ向かう。
雄介がノックして部屋に入ると、和也はやはり既に起きていたようだ。ベッドの端に座り、携帯をいじっている姿が目に入る。
「やっぱ、起きておったのか?」
「まぁな……。ここ、壁が薄いせいかお前等の会話、丸聞こえだったぜ」
和也はにやけた表情で雄介に視線を向けてくる。
「俺は全然そういうの気にせえへんけど、望はそれ聞いたら嫌がるやろな?」
「まぁな。にしても、本当に望の性格変わったよな? まぁ、そこはお前のおかげなんだろうけどさ。多分、俺じゃあの望の性格は変えられなかったと思うぜ。ってか、あの望の性格をどうやって変えることができたんだ?」
雄介は和也の隣に腰を下ろした。
「……へ? 別に俺はなんもしてへんで。ただ、望のことが好きだった……んで、ただ単に離したくないってずっと思ってるだけやしな」
和也はその言葉にひと息吐いて、
「じゃあ、俺の方は望に対する愛が足りなかったって事なのか?」
そう言いながら、和也は考えるように顎に手を当て、視線をそらす。
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