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ー海上ー122
そう言いながら、望は雄介が座っているソファの隣へと座る。
「ま、そこは仕方ねぇよ。望の癖みたいなもんなんだしな。さて、お前等のこと病院の駐車場まで送らないとだったよな?」
「ん? それってどういうことや?」
その和也の言葉に気になってしまったのは、どうやら雄介だ。
「あぁ! そういうことな! そういや雄介にはまだ言ってなかったんだよな? 昨日さ、俺眼鏡無くしただろ? だからさ、昨日は車の運転出来なくてさ、和也に家まで来てもらったってわけさ……だから、俺の車は病院の駐車場に置いたままってなわけ……とりあえず、俺の眼鏡が出来るまで雄介が車の運転してくねぇか?」
「あ、ああ! そういうことな。車の運転やったら俺に任せてくれたらええし」
雄介はその話を聞くと立ち上がり、三人は家を出て和也の車へと向かう。
それから、病院の駐車場まで和也が雄介たちを送ってくると、和也はそのまま家へと向かう。
「さて、やっと……本当に二人きりになれたな」
雄介はそう言いながら運転席のドアを開け、運転席へと乗り込む。
望の方も自分の車だけあってか、素直に助手席へと腰を下ろす。
「しっかし、ほんまに二人だけっていうのは久しぶりやんな」
「ああ、そうだな」
二人きりの時間というのが久しぶりだからなのか、きっと望の中では二人だけの空間というのを意識してしまったからであろうか。雄介とは反対側を向き、窓の外に流れる景色を眺めながら答える。
その望の雰囲気に気付き、雄介は軽く微笑むと黙ったまま運転を続ける。
「な、望……何処の眼鏡屋に行くん?」
望が意識しないような言葉を選び、望に質問する雄介。
「デパートだ……」
と、望の口からはそう返ってくるだけだ。
「ほなら、車はそのデパートにある駐車場に止めたらいいか?」
「ああ、それでいい」
久しぶりに二人だけの空間で、望は上手く会話ができないようだ。雄介もそんな望に気付いたからなのか、そこから先は本当に黙ったままだった。それからデパートの駐車場へと到着すると、雄介は先に車から降りたが、なかなか望が降りてくる気配がない。
そんな望に気付いて、雄介は助手席側へと移動し、
「な、望……大丈夫なん?」
「ああ、まぁ……。でもさ、悪いんだけど……雄介に手伝って欲しいんだけど……」
その望の言葉に雄介は、望が何を言おうとしているのかが分かったのか、
「今の望は目見えないんやったな」
「ああ、そういうこと……」
雄介はその望の言葉に笑顔になると、望へと手を差し伸べる。
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