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ー海上ー125
雄介が必死になって望の姿を探し、心配した矢先、望も同じように雄介を探してキョロキョロと辺りを見渡していた。その姿が目に入ると、雄介はすぐに望の手を取った。
一瞬、望は体をビクリとさせたが、視線を上げて、それが雄介だと気づくと、安心したような表情を見せる。
「ほんま良かったわぁ……すぐに見つかって……」
「お、お前が先に行っちまうのが悪いんだろうが!」
望は本気で怒っているらしく、声を荒らげた。
「スマンな。眼鏡が戻ってきたし、俺の手はもういらんかなって思うてしまってな……せやな、俺が勝手に手を離してしもうたのが悪かったわぁ」
雄介は困ったような表情をしながら謝るが、望は顔を伏せたまま、
「と、とりあえず、ここは人混みだぞ……だから……その……お前に手を離されちまったら……」
言葉が続かない望に、雄介は優しく応じる。
「分かった……せやなぁ。人混みの中では手を離したらあかんってことやんな? せやから、もう望の手は離さへんわぁ」
そう言って、雄介は今度こそ望の手をしっかりと握り、人混みの中を歩き始めた。
「……で、雄介、本当にどこに行く気なんだよ?」
「特に行きたいとこはないんやけどなぁ。デートやから車より歩いた方がデートって感じするやん?」
「まぁ、確かにそうだけどよ……なら、何か目的を持って行動した方がいいんじゃねぇのか?」
「たまにはええやんかぁ。いつも俺らは縛られた仕事しとるやん。せやから、オフの時くらいは自由に動こうや? もしかしたら気分転換になるかもしれんし」
雄介の意見に少し気が向いてない様子の望だったが、とりあえず雄介について歩いていた。
だが、人混みが少し和らいだ直後のことだった。
「ちょ、待った……望……」
突然、雄介が額を押さえながら、その場に座り込んでしまった。
「どうしたんだ!?」
「ただの目眩やって……」
「目眩……!?」
望は慌てて近くのベンチに雄介を座らせた。
「お前な……まさか、寝ないでデートに来たとか言うんじゃねぇだろうな?」
「と、とりあえず二時間くらいは寝たけどな」
「そんなの、寝たうちに入らねぇよ。休める場所に行くぞ! 今は俺が運転できるから、安心しろ」
「せやけど、せっかくのデートやのに……?」
「馬鹿なこと言ってねぇで、行くぞ!」
望はしっかりと雄介の手を握り、来た道を戻ってデパートの駐車場へと向かった。
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