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ー海上ー126

「なぁー、望ー! たったこれだけのことでデート中止になるんはやっぱ嫌やわぁ」 「わがまま言ってんじゃねぇよ! 子供じゃあるまいし」 「ほんまにただの寝不足だしー! 大したことあらへんって! ほんまこないなことで望とのデート中止にしたくないんやぁ」 「そんなくだらないこと言ってる暇があるんだったらさっさと車に乗りやがれ!」  望は雄介の背中を押して、無理やり車に押し込むと、車を走らせ始めた。  行きとは違い、車内は静かな二人。雄介の方は、デートが中止になってしまったせいで気まずくなり、塞ぎ込んでいた。だが、ふと窓の外を見ると、いつもと違う景色が目に入る。 「な、望……家に帰るんと違う?」 「……さぁな」  望は一瞬間を置いて、曖昧な返事をする。その答え方に、雄介は首を傾げた。  しばらく車を走らせると、望の車はビジネスホテルではなく、ラブホテルの駐車場へと止まった。 「まぁ、とりあえず……家に帰るよりも、こっちの方が近かったから選んだだけだ。シたくて来たわけじゃなくて、休むためだからな」  そう言う望は、雄介に視線を向けていなかった。しかし、雄介は何かに気づいたのか、軽く微笑むと、車から降り、望の手を掴んでホテルの中へと入っていった。  雄介がリードしてホテルに入ったものの、久しぶりのホテルでシステムに不慣れだったらしく、 「ココのホテルのシステムってどうなってるんやろ?」 「はぁ!?」  望は驚き、声を裏返す。 「……ってか、俺はこういうとこあんまり来たことないし、マジで知らねぇんだけどよ。前に来た時は和也が全部やってくれたし、彼女と付き合ってた時は彼女の家だったしな……お前はこういうとこの経験あるんじゃねぇのか?」 「まぁ、あるっちゃあるんやけど……システムが違うんやな」  二人がロビーで話していると、次に来たカップルが壁にある部屋の写真をタッチして、レシートのようなものを手にし、エレベーターに乗り込む姿が目に入った。  それを見た雄介は、 「あ! なるほどな! そういうことやったんかいなぁ!」 「ってか、それくらいわかっとけよ」 「……って、最近はお前の家、いや、俺らの家ばっかやったやんかぁ」  望は呆れつつも、少し微笑んだ。

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