1099 / 1491
ー海上ー127
とりあえず二人は前のカップルがやっていた通りに部屋を選ぶと、部屋の方へと向かう。
エレベーターで上がって部屋へと向かう廊下では、何故か何も喋ろうとしない二人。
どうやら、二人きりでホテルに来たことがないためか、緊張しているようだ。
さっきロビーで受け取ったレシートに書かれている部屋番号を確認し、部屋の中へと入って行く。
だが、やはり部屋の中に入っても、前に和也達と来たような部屋で、テレビとベッドとお風呂がある部屋でしかなかった。
「ま、とりあえず……お前の方は体休ませろよ。他の事はそれからだ」
望はそう言いながら、雄介の背中を押してベッドの方へと向かわせる。
「平気やって……今さっき望に車の運転任せておいた時に、十分に休ませてもろうたしな」
「それでも、休んでおけってーの! それと飯も食ってないんだし、飯も頼もうぜ。もしかしたら、空腹からきてるのかもしれねぇしな」
望はテーブルの上にあったメニュー表を雄介に渡す。
「ほな、俺はうどんでっええわぁ」
「うどんかぁ……じゃあ、俺もそれでいいかな?」
望もそう答えると、今言っていた食べ物をそこにあるリモコンを使って頼み始める。
「しかし、今は便利な物はあるんやなぁ?」
「……へ? そうなのか? ここにあるファイルを見ながら操作しただけなんだけどさ」
「俺ん時はまだ電話すて頼まなきゃいけなかったしな」
「そうだったんだな」
そう望は納得するのだが、
「お前はそんな事はいいからさ、飯が来るまで寝てろっていうんだよ」
「ほな、望が添い寝してくれるっていうんやったら寝るわぁ」
雄介が子供みたいなわがままを言った後、望は仕方なさそうに雄介がいるベッドまで向かい、
「これで文句ねぇのかよ」
望はそう言いながらも、既に眼鏡はベッドサイドにあるテーブル上へと置いていた。そっと雄介の体へと身を寄せる。
雄介はその望の行動に満足したのか、体の向きを横にし、望の首の後ろへと腕を回すと、もう片方の腕は腰の方へと回す。
「……なんやろ? 久しぶりやんなぁ、二人きりでこんな時間過ごすって」
ホテル特有の淡い光が、二人をそういう気分へとさせているのか、二人はそんな幸せな時間を今は過ごしている。
「望……?」
雄介は上半身だけを起こすと、望のことを見つめるのだ。
ともだちにシェアしよう!