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ー海上ー128
「朝な、俺が言いたかった事っていうのはこういう事やったんやけど、望もそういう気分やったんか? だから、ここに連れて来たって事なんか?」
「それはさっき言ったじゃねぇか……家の方に帰るよりかは、ここに来た方が早かったんだって……」
そう望は、完全に雄介の視線を外して言っているのだから、雄介にはちゃんと望の気持ちが伝わっているのであろう。
「……嘘吐くなや……望の顔にちゃんと書いてあんで、今日は俺とやる気満々やってな」
雄介からしてみたら、素で言ったつもりだったのだが、どうやら望からしてみたら図星だったらしく、顔を真っ赤にさせてしまっていた。
「そないに素直じゃない望も俺はほんまに好きやで……。 今まで望に言えんかった事があるんやけど、俺の方はほんまに望の事愛しておるし、このままずっと一緒におりたいとも思っておるし、望の事幸せにしてやりたいとも思っておるしな。 何で今更そないな事言うかって言うと、昨日初めて望が俺に本気だって事を伝えてくれたやろ? せやから、俺の方も望に対して本気やって気持ちを伝えないと失礼やなぁ……って思うてな。 ほんで、昨日の夜はその事をずっと考えておって寝れんかったっていうのもあるんやぁ」
今まで雄介の言葉を黙って聞いていた望だったのだが、
「……ってか、本当にお前って馬鹿だよなっ!」
望は上半身を起こすと、更に言葉を続ける。
「仕事中に俺の事なんか考えてるんじゃねぇよ! もし、そんな事してて仕事中に怪我でもしたらどうするんだ!?」
「そう言うって事は……俺の体の事心配してくれてるんか?」
雄介は半分冗談のつもりで言ったはずだったのだが、望は本気らしく、
「まったく……当たり前だろ! それ位分かれよなぁ」
その望の言葉に動揺しているのは雄介の方だ。 まさか、あの望がそこまでストレートに答えてくれるとは思ってはいなかった事だろう。
そんな中、チャイムの音が部屋内に鳴り響く。
「そこどけ……俺が行ってくるから……」
「あ、ああ……」
雄介は、望の言葉に慌てて体を避ける。
望は玄関の方へと向かい品物を受け取ると、それをテーブルの上へと置く。
「早くしねぇと冷めちまうぞ」
さっきまでのいい雰囲気はどこにいってしまったのだろうか。 雄介はベッドから降りると、望が言っていたテーブルの方へと向かい、望の隣へと腰を下ろす。
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