雄介は望が言いたい事が分かっているのか分かっていないのかは分からないのだが望にそう聞く。 「分かってる癖に……お前……わざと聞いてるんだろ……んん！」 　望はそう何か言い返そうとしたのだが、雄介の方はわざと望の耳を舐め言えなくしてしまった。 「何！？　もっ回言って？　但し、言い訳はあかんよ……そしたら、今日はもっと意地悪な事してまうで……」 　その雄介の言葉に何故か黙ってしまっている望。 　そう雄介の言葉で気になってしまった言葉があったからだ。　今言った雄介の言葉『意地悪してしまう』という言葉に反応してしまったらしい。 「な、雄介……」 　望の方は急に真剣な表情をし体を仰向けへとさせると涙目で雄介の事を見上げる。　そして雄介の肩へと腕を回すと胸の中へと顔を埋め、 「悪い……俺、お前に嫌われるような事思っちまったのかも……」 　そこで一旦望は言葉を切ると申し訳なさそうに、 「今さ……お前が言ってた『意地悪な事をする』って言葉に……胸が高鳴っちまってたんだよな」 　その望の言葉に一瞬雄介は目を丸くしたのだが直ぐにいつもの表情へと戻すと、 「なーんや……そないな事か？　こっちからしてみたら何言ってんねんって事なんやけど……。　だってな、俺からしてみたら今の望の言葉、一番最高な事やって思うたんやけどな……」 　その雄介の言葉に今度望の方が頭の中がはてなマーク状態なのかもしれない。　その言葉に望は首を傾げながら雄介の事を見上げる。 「ん？　あ、まぁ……そこはな……望が俺にそういう風に思ってくれた事が一番最高な言葉やって事なんやけど……」 　その雄介も言葉に望の方は安心したような笑みを浮かべると、 「雄介！」 　今まで不安そうで心配そうでそんな表情を浮かべていた望だったのだが急に笑顔になると望は雄介の肩に回していた腕に力を込める。 「望……俺が好きなんは望だけやって言うとるやろ？　それにこの俺が望がした事や言葉で嫌になったって言った事あるか？」 　望はその雄介の言葉に首を横に振る。 「せやろ？　それに、俺の方はむっちゃ嬉しい位なんやで……。　望が俺に向かって本音を言ってくれたっていう事がな……。　寧ろ、今までそないな事言うてくれた事がなかったしなぁ、せやから、少なくとも俺から望の事を嫌いになるって事はこれから先ないと思うから安心して……」 　雄介のその言葉に答えなくなってしまった望なのだが、雄介の方はもう望の性格は分かっているからなのか、そこからは雄介の方も無言で望の額や唇へとキスを落としていく。 「ゆ、雄介……ありがとうな……」 　何が『ありがとう』なのかは口には出さないものの雄介の方はその言葉に笑顔を向ける。 「今日は望の事がよく分かって嬉しい日やわぁ」 　雄介は望の体を強く優しく抱き締める。