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ー海上ー148
「そんな訳ねぇだろうが……そんなぼけかましてねぇで、フロントに電話してみろよ」
「せやなぁ」
雄介はそう言うと、望に言われた通りに電話をする。すると、やっとこの部屋のシステムが分かったのか、エアシューターを使って料金を払うという事だ。
「雄介! これじゃねぇ?」
「みたいやな……説明ここに書いてあるしな」
そのエアシューターのシステムは、どうやら筒状の物にお金を入れてボタンを押すと、その筒が管を通り、フロントに着く仕組みになっているらしい。
「よっしゃ! お金はこの筒に入れたし、後はボタンを押せばええんやんな」
雄介がそう言ってからボタンを押すと、どこからか空気が出てくる音が聞こえてきて、一瞬にしてお金の入った筒が何処かへと行ってしまう。そして、暫くしてお釣りが入った筒が戻ってきた。
「なんや……ある意味凄いシステムなんやな?」
「でもさ……今、こんなシステムもホテルってあるのか? まぁ、ここは建物が古い所から見ると、かなり前から建ってるようにも思えるけどな」
「ほな、昔はこのシステムが主流やったんと違う? 確かに今時こんなシステムのホテルはないのかもしれへんな」
二人はそう話しながら部屋を出ると車へと乗り込む。
さっきまで青空が広がっていた空だったのだが、今はもうオレンジ色に輝く空へと変わっていた。
帰りはどうやら雄介が運転する事になったようだ。
明日からはまた二人は同じ家に住んでいるのにも関わらず、すれ違いの生活を送る事になるだろう。
だが今回に限っては明日、望は一日頑張れば明後日の夕方には雄介に会えるのかもしれない。
だから今日という日を本当に大事に使いたいと思っていたのだが、その時、望のポケットに入っている携帯が鳴り響く。
望の携帯の着信音というのは本当にシンプルで、元から携帯の方に入っている着信音だ。
「ん?」
望はその音に気付き取り出すと、そこには『春坂病院』と書いてあった。
春坂病院からなのだから急病人が出たのかと思い、素直に電話に出る望。だが、そこに出たのは望のお父さんである裕二だった。望は裕二から電話だという事に気付くと、営業用の声ではなく少し低い声で電話へと出る。
望からしてみたら、本当に自分の親父から電話が掛かってくるのは、ただ単にめんどくさいからなのだろう。
「……ってか、今日は休みなんだから電話してくんな。つーか、親父が掛けて来るって事は急病人とかじゃねぇんだろ?」
『だからって油断する事じゃないと思うんだがね。 それがもし大変な事故でも起きていて君に電話しているのならどうするんだい?』
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