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ー海上ー149
「だけど、その言い方だとそうじゃねぇんだろ? それで?」
本当に望はめんどくさそうに言うと、先を促す。
「まぁ、一応は呼び出しみたいなもんなんだけどね」
そんな言葉に、今にもため息を吐きそうな望だったのだが、とりあえず大人しく裕二の言葉を待つ。
「君に紹介したい人がいるのだけどね……だから病院の方に寄ってくれるかな? もう、メガネの方は出来てるんだろ?」
「ああ、まぁな。 で、親父が俺に紹介したい人って誰なんだよ? まさか、病院に新しい人が入って来るから、そいつの面倒を見てくれてって言うんじゃねぇだろうな? それは構わないんだけど、それだったらまた今度でいいんじゃねぇのか?」
「そうじゃないよ。 君にとっても大事な人だと思うんだけどね」
何故か裕二は『大事な人』と言うだけで、誰とは言ってはくれない。しかし、その大事な人という言葉で、何故か望は雄介の方に視線を向けてしまっていた。そう望からしてみたら、雄介は大事な人に当たるからなのかもしれない。
「……って、まさか!? 俺にお見合いさせる気じゃねぇだろうな?」
望がそう叫ぶと、どうやら雄介の方も反応してしまったらしいのだが、そこは運転しているからであろうか。耳をピクリと動かすだけで止める。
「それもハズレ。 だって、君は雄介君と一緒にいて、それはそれで幸せなんだろ? なら、私は邪魔をする気はないよ。 それに、例えお見合いの話でも『大事な人』という言葉には合致しないだろ?」
なかなか答えを言わない裕二に焦ったさを感じてきた望は、
「じゃあ、誰なんだよ。 その大事な人っていうのはさ」
「やっぱり、そこは君にとって大事な人っていうのは雄介君しか見えていないから出てこないもんなのかな? まぁ、ヒントとしては『家族』って事かな?」
裕二の性格というのは本当に意地悪な方なのかもしれない。未だに答えを言うつもりも毛頭ないのだから。
「家族!?」
それでも望の頭にはまだまだピンとは来ていないようだ。
とりあえず望は今言われていた裕二の言葉を考えながら、雄介には病院の方に向かうようにジェスチャーを使って指示を出す。
だが暫く悩んでも、望からは答えが出ず、降参したようだ。
「いくら考えても出て来ねぇよ。 だって、母さんも親父と一緒に帰って来たんだろ? だから『大事な人』に当てはまる訳じゃなさそうだし、寧ろその言葉が似合うのは親父なんだからさ……それにお母さんをわざわざクイズにする必要もないんだしな」
「……まだ分からないのかな? じゃあ、そこはまた病院に来てからだよね? ああ! そうそう! 今日は雄介君も一緒なんだろ? なら、雄介君も一緒に顔を出しにおいで……」
そこまで言うと、裕二の方は勝手に電話を切ってしまうのだ。
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