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ー海上ー152
「あれ? 君には一度も話した事がなかったんだっけ?」
「ああ、そんな事一度も聞いた事ねぇよ」
「もしかしたら、話した事はあったのかもしれないのだけど、君は確か記憶を失くした事があったよね? だから知らないのかもしれないのだけど……」
その裕二の言葉に頭を捻ってみた望なのだが、やはりさっぱりと弟の存在が出てくる訳もなく、とりあえず、この歩夢の事について聞く事にしたらしい。
「まぁ、そこはいいのだけど……。とりあえず君には弟がいるって事だよ。まぁ、海外に住むようになってから出来た子供っていうのかな?年は望とは離れていて今は十六歳。今回はお母さんと一緒に帰国してきたっていうのかな?そうそう!歩夢は本当に望に会いたがっていたんだけどね。これからは歩夢も一緒に日本に住む事になったのだけど……。とりあえず、歩夢が日本に帰国してきて学校とか探して入学試験とかって受けさせていたから望に紹介するのが遅くなってしまったのだけどね」
「分かった……それだけなんだろ? なら、もう俺達の方は行っていいか?」
望の方はそれだけを聞くと足早に部屋から出ようとしたのだが、
「兄さん!!」
歩夢は望の後ろから抱き締めると、
「僕とは話しないの? 初めて会ったんだから、僕は兄さんともっと話ししたいんだけどなぁ」
そう歩夢は甘えるような瞳で望の事を見上げる。
「別に俺の方はお前と話している暇なんてないんだよ」
「そっか……」
そう答え、その場ではこうもあっさりと望から離れた歩夢。
「ねぇ、兄さん……そう言えば兄さんの前に居る人ってだぁれ?」
その歩夢の言葉に急に顔を赤くする望。
「そこは……だ、誰ってお前には関係ない事だろ! ただの俺の親友っていうだけなんだからさ」
「……って、ただの親友だっていうのに、兄さんが顔を赤くする所なの? そこは親友じゃなくて恋人さんって事だよね?」
歩夢はそう望の顔を覗き込むようにして見つめる。
望はその歩夢の言葉に言葉を詰まらせてしまったようだ。
「やっぱりー! この人は兄さんの恋人なんだー!」
そう歩夢は言うと今度は雄介の方に興味を持ったのか、雄介の方にも近付くと、
「初めまして、吉良歩夢です。兄さんの事宜しくお願いしますね」
と歩夢は雄介に向け笑顔を向けると手を差し伸べる。
「あ、ああ! おう! 宜しくな……」
雄介の方も歩夢に差し出された手へと手を伸ばすと、二人は握手を交わすのだ。
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