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ー海上ー154

 流石の望もそんな様子の雄介に気付かない訳がないだろう。 「どうした? お前らしくねぇぞ。俺の弟に何か言われたのか?」  その望の言葉に雄介は耳をピクリと動かすのだが、 「あー、いや……なんでもないし。せやから、ま、早く帰ろうや」  雄介はそう望に向かって笑顔を向けるのだが、まったくもって曇り顔は消えていない感じがする。そして雄介は再び望の手を取ると駐車場の方へと向かい歩き始める。  その途中小さな声ではあったのだが雄介は呟くように、 「これからは……ちゃんと俺が望の事守っていかなぁあかんよな?」  そんな小さな声で言っていたのでは望の耳に届く訳もなく、しかも周りには車が走っている音とかも響いているせいか望は今の雄介が言っていた言葉というのは聞こえていなかったらしく首を傾げる望。  雄介は駐車場まで来ると急に歩みを止め望の方へと振り向くと望の肩を強く掴み、 「俺は……ほんまに望の事が好きなんやからなっ! 誰がなんと言おうと俺は誰にも負けへん位にや! 俺はお前に何があろうとも絶対に望の事守ってくしな……絶対にやぞ!」  雄介は望に向かい本当に真剣に望の瞳を見つめて言うと雄介にしては珍しく外で望の唇へと唇を重ねる。 「ん……ちょ!いきなり、こんな所でキスすんだよっ!」  望はいきなりの事で強い言葉で静止を求めたのだが雄介の切なそうな表情を見た途端言葉を止める。  しかし雄介がそんなに切なそうな表情を見たのは初めてなのかもしれない。だからなのか、それとも望の心の変化なのかは分からないのだが、望は、 「どうした? さっき俺の弟に会ってからのお前が変なんだけど……。いつも俺と一緒の時にはあんなに笑顔見せてくれていたのにさ、今のお前は怒ったり、悲しい顔見せたりしてんだけどよ」  流石の望もそんな雄介に心配しているようだ。 「あー、そうやったん? そっかそっか……それやったらスマンかったな。もう、何でもないし、気にすんなや」  そう言って雄介の方はどうにか誤魔化そうと正面を向いて歩き始めたのだが、 「ちょ! 雄介! 誤魔化すんじゃねぇよ! ってか、俺に何か隠そうとしてないか?」  雄介の方は先に歩き始めてしまったのだが望の方はさっきの場所から動こうとしていない。そして、その場で雄介の背中を睨んでいる。  流石の雄介も望の気配がしない事に気付いたのかようやく歩みを止め望の方に視線を向けると、突っ立ったままの望の姿が視界に入ってくるのだ。

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