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ー海上ー155
雄介と望の距離は離れたままだ。駐車場は広く、街灯だってそんなにはない。だからなのか、表情までは確認できなかった。
「望!早く帰ろうって!」
そう雄介は望に向かって言うのだが、
「まだ、話の方は終わっちゃいねぇんだよ……今日、俺はお前との話が終わるまでここを動かねぇからな」
望の言葉に雄介は腕時計を見ると、既に今はもう夜の九時を回っていた。
「アホか!もう夜の九時回ってんやぞ!早く帰らんと明日に響くやろが!」
「今、そんな事は関係ねぇんだよ!ま、お前がちゃんと話してくれれば直ぐにでも帰るんだけどな」
本当に今日という日は雄介にとって頭を悩ませる日だ。
雄介は仕方なさそうに頭を掻くと、
「ほな分かった……家に帰ってからちゃんと話すな。ま、そういう事やから、とりあえず帰ろうや……」
雄介のその言葉に、望はため息だけ吐くと、仕方無しにそこは雄介のことを信じてだろうか。足早に雄介の元へと向かうと、二人は車へと乗り込む。
車の中で二人とも何を考えているのかは分からないのだが、デートの帰りだというのに会話はなかった。
そして家に着くと、早速二人はソファへと腰を下ろす。だが今日は話し合いということだからであろうか。隣同士には座らず、正面同士で座る二人。
「……で、お前はアイツに何を言われたんだ?」
「あ、……それな」
雄介の方は頭を俯かせると、観念したかのように、
「アイツ……望のことが好きなんやって……」
「そこは家族としてだろ!?」
雄介はその望の言葉に頭を上げると、
「あの瞳じゃあ本気やったし、ほんまにほんま望のことが好きなんやって……後は……」
何故かそこで言葉を切ると、再び頭を俯かせてしまう雄介。
「望のこと、一回抱かせてくれたら、望の親父さんに俺のことは悪いように言わないって……俺が望の親父さんに嫌われないようにしてくれるとも言っておったな」
望はその雄介の言葉に息を吐くと、
「お前……まさか、それを気にしてたのか?それで、ずっと機嫌が悪かったのかよ。ってか、逆にそれくらいなら大丈夫だろ?例えアイツがお前のことを悪いように親父に言っても……親父はさ、あんなんでも人を見る目はあるからさ。じゃあ、普通じゃ考えられない俺達の関係を認めてくれてるんだ?多分、そこは俺が好きになった相手だからじゃないと思うぜ。親父も普通に雄介のことが気に入ったからに決まってるじゃねぇか。じゃなきゃ、家も地下室もプレゼントなんかしてくれる訳がねぇだろうが……」
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