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ー崩落ー1
どこまでも高く青く広がる空。もうそろそろそういう季節が終わろうとしている頃。
世間ではあるニュースが毎日のように報道されていた。その話題で病院の方もこの時期というのは本当に忙しくなる。しかし、その病気は内科医の仕事とはいえ同じ病院内なのだから、いくら病院内で空気清浄機や消毒と対策をしていても、罹ってしまう人は罹ってしまうのだから仕方がない。もちろん、望たちだってその病気対策のためにマスクをしている。
望は一日の仕事を終えると、自分たちの部屋へと戻ってくる。
そして部屋へ入ると、いつも望は自分の仕事をするのだが、今日に限っては急にソファへと雪崩れ込むように横になってしまっていた。
「和也ー、お願いがあるんだけどさぁ、冷蔵庫の中に入っているミネラルウォーター取って来てくれねぇか?」
そうだるそうに言う望の様子に、和也が気付かないわけがない。
和也は望に言われて、冷蔵庫の中からミネラルウォーターを持ってくると、
「ほらよ……。な、それよりか望の顔が赤いんだけどさ、仕事中に雄介のことでも考えてて顔を赤くしたのか?」
望は和也からそのミネラルウォーターを受け取ると、飲み始めた。しかし、今の和也の言葉に飲みかけていた水を吹き出してしまう。
「お前なぁ、俺がそんなこと仕事中に思うわけねぇだろうが……」
「だよな!」
と、何故か和也はその望の言葉に笑顔になると、
「ならさ、熱があんだろ?」
今度は真面目な表情で望を見つめる。
「……んなわけねぇだろうが」
望が最後まで言い終わらないうちに、額に冷たいものが当たる。
「まさか、望が仕事中にお酒なんか飲むわけじゃねぇしな。この顔の赤さは熱以外には考えられねぇだろ? それにやっぱ熱いしさ。何も俺にその事について隠すことなんかねぇだろうが、俺の前じゃあ、熱出してること隠すなんて事出来ねぇんだよ。な、お前さぁ、それ、親父さんに診てもらうか? 颯斗に診てもらうか? どちらかにして来いよ! もし、風邪じゃなくて今流行りのインフルエンザだったらどうするんだ? もしそうだとしたら患者さんに移したら大変だろうが……そのくらい望なら分かってると思うんだけどな」
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