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ー崩落ー2

 望は和也の言葉に納得したのか、ソファから立ち上がって部屋を出ると、颯斗のところではなく院長室の方へと向かう。  確かに颯斗も医者ではあるのだが、颯斗が担当しているのは外科だ。それもあるが、まだ身内の方がいいと思ったのかもしれない。  院長室の前に来ると、望はそこでドアをノックする。そしてドアを開けると、そこには院長である裕二の姿があった。  裕二は日本に戻ってきてからというもの、一日たりとも病院から離れていないように思える。そう、絶対に院長室にいるからだ。  そして望がその院長室に足を踏み入れると、どうやら今日は院長の他にも来客があるようで、裕二と会話をしている人物がいる。  裕二は望に気づくと、 「望……どうしたのかな?」 「あのさ、別に親父に頼むようなことではないんだけど、とりあえず、患者さんのためだからな。とりあえず! 親父に頼みたいことがあるんだ……」  そう言って、望にしては珍しく裕二に向かって頭を下げる。  そんな望の様子に裕二は気づいたのだろうか。 「望……いやに顔が赤くないか?」 「ああ、確かに今自分に熱があるっていうのは自覚あるんだけどさ、風邪かインフルエンザか?っていうのを判断してほしくて来たんだよ」 「分かった……じゃあ、とりあえず診察室の方に向かおうか?」  裕二は望にそう言ったのだが、裕二の隣にいた人物が、今まで黙って二人の会話を聞いていたかと思えば、その会話に割って入ってきて、 「な、父さん……僕もその診察に付いて行っていいかな? 今後の勉強のためにさ……ほら、さすがにまだ医師免許を持ってない僕が兄さんのことは診れないけど、兄さんを診察している父さんの姿を見ることくらいはできるだろ?」  そこまで言われると、裕二は歩夢の申し出を断る理由がなかったのか、 「そういうことなら構わないのだけど……」  だが、その二人の会話に顔色を変えたのは望だ。  裕二に頼み込むのが精一杯だったのに、そこに歩夢が入ってくるのは予定外だったのかもしれない。 「ちょ、ちょ、親父! そこ、歩夢には関係ないことだろうが!」  熱で立っているのがやっとの望。そんな興奮した声を上げると、体がふらついてしまう。 「関係なくないよ。だって、僕は高校を卒業したら兄さんが行っていた医大に行って、医師免許取るつもりだしね。勉強なんかいつから始めたっていいんだからさ」  そんなふらつく望を、歩夢が体を支える。 「ところで、お前はなんでここにいるんだよ。そういう風に思ってるなら、こんな所にいるより家で勉強した方がいいんじゃねぇのか?」

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