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ー崩落ー3

「まぁ、今日は父さんに相談事もあったし、だから、学校が終わってから直接ここに寄ったんだよ。もう、そのことについて母さんにも遅くなるとは言っておいたしね」  こんなことなら恥を忍んで颯斗の方に頼めば良かったと、今更後悔しても遅いだろう。 「とりあえず、兄さん……診察室の方に行こうか?」  そう言って歩夢は軽々と望のことを抱き上げるのだが、 「お、おい! ちょっと待て! こんな格好で診察室まで連れてかれてたまるかよ! ってか、マジに離せって! それに、まだ俺の方は白衣姿なんだからよっ!」  大声を上げた途端に咳き込む望。 「兄さん……あんまり興奮して声を上げると、今の兄さんの状態だと喉にも肺にも悪いんじゃない? それに無駄な体力使うとすぐに疲れちゃうよ」  分かりきったことを言われると、余計に腹が立つのか、望はさらに声を上げてしまう。 「うるせー! 離せ! お前にそんなこと言われる筋合いはねぇんだよ! お前がこの俺のことを離せば、俺が大きな声を上げなくて済むんだろうが!」 「ホント、まったく兄さんはわがままなんだからー。ホント、僕とは正反対の性格してるよね? そうそう、僕は全然わがままな性格でもないし、父さんとは仲がいいしね」  歩夢の言葉に、急に咳払いをする裕二。 「とりあえず、兄弟喧嘩は後にして、診察室の方に行こうか? 望はそこまで歩くことはできるのかな?」 「それくらい、できるに決まってるんだろうが……」  望は怒ったように言うと、歩夢の腕から逃れ、暴れて乱れた白衣を直す。 「なら……」  裕二はそこで一旦言葉を切ると、 「歩夢はこのまま望の診察を見に行くのかい?」 「見に行くよ……家で勉強しているより、実際の現場を見た方が勉強になるしね」  その歩夢の言葉に対して、裕二は二人の間に入って、 「歩夢はこう言ってるけど……望は歩夢の意見に賛成かな?」  そう望に告げる裕二。そんな裕二の言葉に、望は顔を上げる。  てっきり望の中では、歩夢の方がわがままを言わず逆らうこともしないから、裕二は歩夢の肩を持つと思っていたが、どうやら違うようだ。ちゃんと望の意見も聞いてくれるらしい。  そんな裕二の言葉に、望は歩夢の方に視線を向けて、 「歩夢……悪いけど……例え身内でも、勉強の為でも、俺のことを好きと言っている間は俺の体を見せる訳にはいかねぇんだよ。そうだな……信用している人になら見せることができるっていうのかな?」  相変わらず遠回しではあるが、親父のことを信用しているということを言いたかったのであろう。そう歩夢に向かって言ったのだから。

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