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ー崩落ー4
その望の言葉を聞いて、歩夢は、
「なーんだ……知ってたんだ……僕が兄さんのこと好きだってこと……」
「ああ。お前に初めて会った日の夜に雄介から聞いたんだよ。雄介はちゃんと俺に話してくれたしな」
「へぇー、優しそうだから雄兄さんは兄さんにそのことは言わないと思ってたんだけどな」
「あのな……お前が言ってる好きと俺と雄介との愛とはなんか違うように聞こえんだよな? お前の場合には、ただ単にやりたいから好きっていうふうにしか聞こえねぇんだけど? それだったら、俺以外にやりたい奴なんかいっぱい居るだろうが……」
「そりゃね……アメリカに居た頃にはいっぱいいたよ。だから、僕なんかは雄兄さんよりテクあるだろうしね。兄さんのこと気持ち良くすることができると思うけどー」
歩夢は望の顔に近づくと、望の顎をクイッと手で持ち上げる。
「だけどね……兄さんみたいにこんなに綺麗な顔立ちの人はいなかったかな? 兄さんは母さんに似たみたいだしね。肌なんか特にすべすべな感じがするしさ」
「まったく! 油断も隙もねぇ奴だなっ! 気安く人の体に触ってくるんじゃねぇよ!」
望は体を動かし、思いっきり歩夢から体を離す。
「あのさぁ、こういうことはアメリカじゃあ日常茶飯事なことなんだけど……それに、僕は兄さんとあまり話したことがないからさ、スキンシップの意味も込めてるんだけどな」
「アホか! それはアメリカ流なんだろうが! ここは日本だ! 日本では日本流のやり方っていうのを学べよな!」
歩夢と望は数分間そんなやり取りをしていた。だが、熱のある望はそろそろ体力の限界が来たのであろうか。荒い呼吸を繰り返しながらも歩夢のことを睨みつける。
「……そろそろ言い合いはいいかな? それ以上やってたら、望の方が倒れてしまいそうだからね……。望……歩けるようなら一人で先に診察室の方に行ってくれないかな?」
「ああ……」
裕二のその言葉に、望は一言だけ答えると、先に院長室を後にする。
望が院長室を出ると、そこには和也と裕実が立っていた。
「お前達……何でここに!?」
「ああ……裕実と話してたらさ、裕実が望のことを家まで送ってあげたらいいんじゃねぇのか? って言うからさ……部屋で待っていても望が戻ってくる気配がなかったし、だから、ここで待ってたっていうのかな?」
「そっか……悪いな……」
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