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ー崩落ー5

「ところで、望。 中で望と話をしていた奴っていうのは誰なんだ?」 「あ、そっか……雄介は知ってるけど、和也達は知らなかったんだっけ? とりあえず、俺の弟だよ……歩夢っていう名前だ」 「望の弟!? え? ちょっと待てよ……俺は望とずっと一緒だったけどさ、今までそんなこと聞いたことがないんだけど?」  和也はその望の言葉に驚いた表情をしながら望のことを見つめる。 「俺だって、ついこの間初めて会ったばかりだよ。 親父の話ではアメリカにいる頃にできた子なんだってさ」 「年は?」 「俺と十歳離れてるから、今はまだ高校二年生だ。 これくらいでいいか? 俺の方はこれから診察室の方に行かなきゃなんないしさ」 「なら、俺達の方も下まで付き合うよ」 「ああ、ありがとう」  そう、今日はいやに素直な望に和也は目を丸くするのだが、裕実とアイコンタクトを交わしながら和也に訴える。  和也と裕実は、先に歩き始めてしまった望のことを追いかけるようについて行くと、その望の後ろでこそこそと話し始めるのだ。 「あ! 思い出した! 望は熱を出すとさ……素直になるんだったな」 「これがそうなんですか!?」  裕実の方は確かに前々から、望が熱を出すと性格が素直になるとは聞いていたが、今日初めてそれを目の当たりにしたからなのだろうか、その和也の言葉に驚いたような声を上げる。 「ああ! そうだ! 間違いない! 今なら素直な望の意見を聞けるぞー! この間に望のことを弄ってみたら面白いことになりそうだけどな」  和也はそういたずらっ子のような表情をするのだが、その計画に気づいた裕実は止めに入る。 「ダメですよー! そんなことしたら望さんが可愛そうじゃないですかー」  裕実は和也に向けて頬を膨らませる。  その直後、和也と裕実は背後に気配を感じ、二人はほぼ同時に振り向くと、そこには後から来た裕二の姿があった。 「君達……それはどういうことかな? 確かに私の部屋に来ていた時の望がいつもと違う感じがしていたのは確かなんだけどね」  和也は突然の裕二の登場に驚いたような表情をしていたが、今自分の後ろにいるのが裕二だということに気付くと、安心したような表情をし、 「あのですね……望が一度記憶喪失になったのはご存知でしたっけ?」 「知らないかな?」 「とりあえず、望は一度記憶喪失になったことがあるんですよ……まぁ、今は完全に記憶喪失の方は治ったんですけどね。 まぁ、その後遺症っていうんでしょうか? 望は熱が出た時にだけ素直な性格になるようになったんですよね」

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