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ー崩落ー11

 裕実は和也から携帯を受け取ると、今まで静かだった望が急に苦しそうな声を上げてきた。 「ゆ、雄介には……連絡すんな……」  そう、苦しそうに途切れ途切れに雄介への連絡を拒む望。 「え? どうしてですか?」 「分からねぇのかよ……雄介にそんなこと言ったら心配するに決まってるだろうが……。そんなこと言ったらアイツ……俺のために一晩中看病するに決まってるだろ? そしたら、明日の仕事に響くだろうが……」  確かにそうだ。望の言う通りなのかもしれない。  そう、望の言う通り、望が病気だと知れば、雄介は間違いなく望を心配して看病するだろう。 「それに、雄介にはこのインフルエンザを移したくねぇしな。アイツだって人を守る仕事をしてんだ……俺のせいでインフルエンザが移って、仕事休ませるわけにはいかねぇだろ?」  さらに、その望の言葉に二人は考えさせられてしまう。 「なら、どうすればいいんだよ? 望のこと入院させればよかったのか?」 「それはそれでマズいんじゃねぇのか? これ以上、感染者を出すわけにはいかねぇだろうがよ。と、とりあえず家に行ってくれ……後は俺が何とかするからよ。言っておくが、雄介には俺が病気だったってこと、絶対に言うんじゃねぇぞ……電話もメールも雄介には一切するんじゃねぇからな」  和也は仕方なさそうにため息をつくと、 「分かったよ……」  そう答えるだけだった。 「明日は休みだし、明日は俺が望のところに行くよ」 「そしたら、今度は和也が……」 「……ってか、俺等はもう手遅れだろ? ずっとこうして望の側にいるんだからさ……どっちみちいずれは感染するんだしさ」 「そうですよー。だから、看病の方は僕たちに任せてくださいね」 「なんなら、今日は俺たちも望の所に泊まったらいいんじゃねぇのか?」 「ああ、それでも構わないよ」  望は安心したのか、家に着くまでの間、目を瞑るのだった。  暫くして望の家へと到着すると、裕実は望を起こし始める。 「着いたのか?」 「着きましたよ。後は望さんが雄介さんに、望さんが病気だってことをバレないようにするだけなんですが……まずはどうしますか?」

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