和也は早速、望の家に電話をかけると、部屋の中から電話の音が鳴り響き、続けて廊下を走る雄介の音が聞こえてくる。望の家では、電話がリビングに置かれているためだ。 　和也はそんな雄介の行動に気づき、望に合図を送る。望はそっと玄関のドアを開け、一気に二階へ向かうのだった。 　どうにか二階にある客間に到着した頃、雄介が和也の電話に出たようで、和也の携帯から雄介の声が聞こえてくる。 「よ！　久しぶりだな」 『なーんや和也かいな……望やと思っておったんやけど……』 　雄介の声には少し残念そうな響きがあった。 「ま、とりあえずさ……お前ん家に入れてくれねぇ？　望がさ、先に『トイレー！』とか言って中に入っちまったから部屋に入れなくなっちまったんだよ」 『そないな事、気にするなや……勝手に入って来ても良かったしな』 「ま、まぁさ……雄介の方はまさか俺らが来るとは思ってなかっただろ？　一応、伝えとこうと思ってさ……」 『……って、珍しいなぁ。お前らが俺の今日の休みを知ってて、家に来るなんてな』 　雄介の何気ない言葉に、和也は一瞬言葉を詰まらせる。雄介からそんなことを言われるとは思っていなかったのかもしれない。 「まぁ、たまにはさ……お前らのことを茶化そうと思ってよ」 　一瞬焦った和也だったが、どうにか切り返す。 『ま、ええわぁ……望から許可が出てなきゃ来ぇへんのやし、ええんやないかな？　ほな、電話切るで……』 「あ、ああ……」 　和也はなんとか雄介に答え、安心した様子だ。 「やっぱ、嘘吐くのって心苦しいよな？」 「和也って嘘吐いたことないんですか？」 「俺は素直で正直もんだからなぁ。嘘ってのは嫌いなんだよ」 「そうだったんですね。とりあえず、部屋に入れてもらいましょう」 　裕実は和也に笑顔を向ける。和也も笑顔で答える。 「そうだな……」 　二人は望の家へと入っていく。 　玄関前には雄介が迎えに出てきてくれたようだ。 「やっぱ、望はトイレみたいやな」 「ああ、悪いな……俺たちだけで」 「お邪魔します……」 　二人は靴を脱ぎ、雄介と一緒にリビングへ向かう。 「な、雄介ー、俺らさぁ、腹減ってんだけど……何かあるか？」 　和也は図々しいと思いながらも、今はどうにかしてこの場を乗り切らなければならないと雄介に言ってみた。 　今日は不自然な行動をしてでも、雄介と望を合わせるわけにはいかないのだから、どうにかごまかしていかなきゃならない。そこは望との約束でもある。