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ー崩落ー20

「ん……」  雄介が望の体を拭くたびに、色っぽい声が漏れ、望の方は無意識なのかもしれないが、雄介にはその甘い声が本当に困るほど響いていた。  雄介はそんな誘惑に耐えつつも、拭き終わると望にパジャマを着せていく。最後のボタンを留めたところで、雄介は安堵の息を漏らした。病気の望に手を出さなかったことに、少しホッとしているようだった。  ところが、望をベッドに戻そうと首や腰に手をかけた瞬間、 「ゆ、雄介……俺の側に居てくれねぇか?」  息をつきながら、誘うような瞳で見つめる望の言葉に、雄介は思わず動揺した。 「そ、それは……まぁ……ええねんけどな……」  まさか望の口からそんな素直な言葉が出るとは思わなかった雄介は、慌てて答えた。 「なら、良かった……」  望は雄介の言葉に安心したように瞳を閉じ、雄介もまた安堵のため息をつく。今日の望はいつも以上に色っぽく、何度も手を出しそうになるのをこらえた。病気の望に手を出すわけにはいかないのだから、雄介としては相当我慢していたのだ。  そんな中、着替えたことでスッキリしたのか、それとも雄介がそばにいる安心感からか、望は微笑みながら雄介に手を伸ばし、 「キスが……したいんだけど……」  と唐突に言い出す。 「な、望……それ、本気で言ってるん?」 「……はぁ!? なんでだよ……好きな奴にキスしてくれって言っちゃいけねぇのかよ」 「あ、いや……そうやなくてな……。そのな……今の望にそないな事言われたらな、なんていうんか?」  雄介は困惑しつつ、視線を逸らしながら言いづらそうに続ける。 「せやから、そのな……望は今インフルエンザでダウンしとって……今のその顔がな……どうも誘われてる気がしてる上に『キスして……』って言われてもうたら……俺の方が我慢できないっていうんかな?」 「あのな……気付けよ。こういう言葉を言ってるって事はさ……俺がお前のこと誘ってるに決まってるだろ?」

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