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ー崩落ー22
「誰に聞いたんだ?」と望は続けようとしたが、雄介は望に聞かれる前に言葉を遮ると、
「和也と裕実にや……。望……確かにそれを聞いたのは和也と裕実からやったんやけど、アイツらのこと怒らんといてな。アイツらも悩んだ挙句、俺にそのことを話してくれたんやからなぁ」
雄介は望に向かって微笑むと、
「俺がな、望に会えないって思うて悲しい顔しておったら、アイツらも俺の顔見て気付いてしもうたんやろな?せやから、教えてくれたんやって。もし、俺が和也の立場やったら俺もそうするやろしな。確かに望は医者やから、そう言うかもしれへんけど、一般的に考えて恋人が病気になったら心配になって側に居たいって思うもんやんか」
それを聞いて望も安心したのか、
「ま、確かに雄介の言う通りなのかもな。ゴメンな……さっきはあんなこと言って……正直、和也にあんなこと言っちまったから今日はもう雄介には会えないって思ってたんだけどな。本当のところは会いに来てくれて嬉しいと思ってるからさ」
その望の言葉に、雄介は首を傾げる。
普段の望なら、そんなことは全くもって言わないからだ。
「望……どないしたん?」
きっと雄介は、望が熱を出すと素直な性格になることを忘れているのだろう。素でそんなことを聞いてしまっているのだから。
「お前こそ何を言ってるんだ?本当に俺がお前のことが好きだからこそ、こういうことを言うんだろうが……好きじゃなかったら普通そんなこと言わねぇだろ?」
再び首を傾げる雄介だが、とりあえず望に合わせてなのか、
「ま、あ、ああ!せやったな……せや!せや!せやったな!」
そんな素直な望にまだ慣れない様子の雄介は、頭を掻きながら苦笑いする。
どうやら雄介は、望が素直になることを忘れているから、こうした反応をしているのだろう。
「……で、今日はお前……ここに居てくれるのか?」
「当たり前やんかぁ。望の病気が治るまで、ここから暫く離れる気はないしな。それに、望が苦しんでいる姿なんか見ておれんし、あ、そういう意味ちゃうよ。ほら、苦しんでるんやったら、むしろ側にいて看病したいっていう意味やからな。ほんで、むしろ俺にうつしてもらっても構わへんしな……そうそう!それで、望が元気になるっていうんやったら俺はそれでええって話やって。せやから、せめて今日はキス位はええねんやろ?それ以上のことは流石に和也に止められておるしなぁ」
「ありがとうな……雄介。まさか、お前がそこまで強い気持ちでいたなんて思ってもみなかったしな。分かった……もしお前に病気がうつったら俺が看病してやるからよ。ほら、言うじゃねぇか、一回罹ったら免疫が付くってさ……あ、でもインフルエンザの場合は違ったんだっけかな?」
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