和也は雄介の言葉に笑い始める。 「まさか、お前覚えてねぇとか？望が熱出すと素直になるんじゃなかったっけ？」 　雄介はその和也の言葉に一瞬目を丸くしたが、次の瞬間には肩を落としていた。 「あー、せやったわぁ」 「まぁ、そう肩を落とすなって……それが、お前に対する望の本当の気持ちだろ？逆に嬉しいことなんじゃねぇのか？それに、今のうちに望の本当の気持ちを聞けるなんて……」 　和也はそう雄介に向かって微笑むと、今度は裕実の手を握り、幸せそうな笑みを浮かべる。 　裕実も和也の意図を察したのか、笑顔で和也の肩に頭を乗せ、テレビに視線を向ける。 「せやな……そうや！和也の言う通りやん！なんで俺は一瞬でも望が素直じゃなかったことに喜ばへんかったんやろ？ホンマ俺が罰当たりな奴やんかぁ」 　そう独り言を漏らし、温まったお粥を丼に移し直すと、二階へ向かう。 「望……待たせてスマンかったなぁ。ちょっと、まだ熱いかもしれへんけど、少しでええから食べてな」 　雄介は丼をテーブルに置き、望の体を起こして自分に寄り掛からせる。 　まだ熱いお粥をスプーンで掬い、吹き冷ましてから望の口へと運ぶ。 　最初は素直に食べていた望も、病気のときはやはり食欲が湧かないようだ。 「悪いんだけど、雄介……」 　その一言で望が何を言いたいのかを察したのか、雄介は、 「まぁ、今日のところは無理せんでええよ……それでも半分位は食ったしな」 　望の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと体をベッドへと沈ませる。 「後は俺が食っておくし」 「ゴメン、すごく美味かったんだけどさ」 「体の方が受け付けてくれへんのやろ？それに望が謝る必要なんかないやんか……いつもやったら、俺が作った飯、食ってくれるやろ？」 　雄介は微笑みながら、望が残したお粥を平らげていく。 「美味かったわぁ。久しぶりに作ったっていうわりには上出来やったな」 　その雄介の言葉に、望はクスリと笑って、 「自画自賛だな」 「だってな、望やって美味いって言うてくれたやんかぁ」 「そりゃそうだけどよ」